真夏の着火

オリンピックが始まって

季節になっても弾けない花火が

一瞬だけ炎を散らし

鳴かない蝉がようやく一鳴きした頃

あれだけ嫌いだった夏と

君はようやく仲直りをする

鏡に映る自分の少し生えたあご髭とか

少し茶色がかった髪の毛とか

大人になりきれない笑顔とか

多分君自身どうでもいいんだろうけど

そのどこかに自分を揺るがす導火線があると

信じているんだね

僕は暑くなっていくごとに増える

ラムネとばかりにらみあって

今年の夏もどこにも出掛けないし

そんな自分も別に悪くないと思っている

熱気なんて時間の盗人が

陽気な時にだけ現れるもので 

本当は漫然とした退屈の中にだけ

生きることをひも解く手がかりが潜んでいる

モスバーガーを一口食んで着火

 空になったシェイクを放り込んで落下

  心は浮遊して赤道線上でのらりくらり

歓喜の真っ只中にいるのに君は無視をして

今年の夏も何もなかったと

冗談まぎれに言うんだろう

退屈に上塗りされる冗談

でもやっぱりその自嘲気味の笑い顔でさえ

僕は好きだ

だから夏は過ぎ去るべくして過ぎ去るんだ

喪失に喪失を重ねたと思いこんだままで

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