第2話社会貢献
社会に溶け込めず社会に貢献できる自信がない者にとっては渡りに船だったが、それでも問題はある。
例えば努力次第で何とかなってきた人間にとってはどうだろう?
酸いも甘いも噛み分けてきたワケだから、納得はいかないだろう。
_ウチの親みたいに。
「お父さんは知ってるぞ。こういうヤツをヘタレというんだろ?」
知った風な口ぶりで父親は刺し箸をテレビに向けた。
俺がやったら無作法だと罵るクセにこの男は。
必ずしも逃げ場を探すことばかりが「ヘタレ」なワケじゃない。
この人達みたいに深い考えを持って自殺する人にその言葉を向けるのは立派な不敬罪に当たる。
そう。科学者と教団が「リコール」を発表してからそれに伴い法律が変わった。
自殺に関する記述が。
止むに止まれぬ事情がある場合に限り自殺は個人の自由、但しリコールされることを承諾したものとすると。
それまでは自殺も立派な殺人罪だったのだ。
前の法律では自殺の場合、母親がその罪を被ることになっていた。
尚、自殺者に対する軽蔑、発言等は不敬罪に当たると。
勿論それは軽犯罪の域であり必ず罰則規定があるものではない。
「悪口くらいは誰でも言うもんな」
そこまで犯罪にされてしまうと息もできなくなってくる。
世の中には腹の立つことも理不尽なこともよくある。
俺だってそうだ。
親が他人を見下していることや、友達関係の希薄さとか、愛だの恋だのもうんざりだった。
癒やしなんてものは所詮気休めで、何の足しにもならない。
人がこれだけ悩んでいるのに周りにいるヤツときたら振り向きもしない。
友達?恋人?それが何をしてくれるって?
ソイツらが人を顧みないから教団ができたんじゃないかな?
科学者だってそんな現実を変えたくてリコールを発明したんだと俺は思っていた。
リコール アキヅキ @aki-2ki
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