ブリグズビー・ベア ー18.9.6.

監督:デイブ・マッカリー



「私は愛されていました、を証明する。」

誰が何をどう創ろうとも受け手の心に優しく残ったなら、

それが「真実」になるんだと感じた。


その「真実」を伝えたくて、かつての受け手がまた何かを創るとしたら。


大事なことはきっと社会的な立場や権威ではなく、

いかに伝えるべく「真実」がそこにあるか、なのだと思った。


主人公を育てた両親は、実は子供の頃に主人公を誘拐した犯罪者だった。

世間から隔離するため、誘拐犯が子供に作り続けた教育番組「ブリグズビーベア」。

成長したのち主人公は見つかり、本当の親もとへ帰ることになるが・・・、

という物語。


「ブリグズビーベア」の大ファンとなった主人公は、

果たしては洗脳されたととるか、

愛情たっぷりに育てられたととるのか、

ここが本作の分かれ目であり、キモのせめぎ合いだ。

だが愛は客観でなく、主観で判断される。

「ブリグズビーベア」のよさを伝えんがため自ら撮影を始める主人公に、

つまり最初の家族は青年を突き動かせるほど確かに、

愛して大事にしていたんだなあと思うほかない。

同時にこれは、次々使い捨てられてゆく商業主義への皮肉や批判も含んでいるのではなかろうかとも振り返れるし、

本当の親だろうと我が子の中にブリグズビーを残せているのだろうか、とも考えられる。


ともあれ号泣する人、続出の劇場内。

癒されたい人は見るべしとお勧めしたい。



見えないものの授受は大事だが、見えないからこそ確証を得にくい。

だが一度、確かに受け取った。

そう体感することが出来たなら、これを裏切ることができないのも事実だ。

そんな繊細なやりとりを描いた本作はちょっと地味である。

かろうじて絵ヅラがキャッチー、という具合で、

感動の大作!

という雰囲気はない。

だが間違いなく込められたメッセージは良質で、誰もを豊かにするものだろう。

主役がディカプリオとかだったらもっと話題になったろうに

(アリースター誕生、で申した通り)

もうひとつ、自分の中にある「真実(ブリグズビーベア)」を取り出す。

この孤独と勇気にも惹かれる。

モノカキもまた、そういう作業じゃなかろうか。

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