アリー スター誕生 ー19.1.1.

監督:ブラッドリー・クーパー



「成功物語でも、ラブロマンスでもなく」

レディー・ガガの映画かとおもいきや、

ガガの立ち位置はジャックという登場人物の不幸と苦悩を照射するスクリーンに過ぎず、主役はおそらくタイトルとは裏腹、

ジャック役、ブラッドリー・クーパーの方で間違いないと思う。


直接、表現されないジャックの人生がアリーを通して、ちらほら透けて見える。

このパーツパーツをゆっくりとつなげ直した時、

見えてくる全貌と果ての結末に、一方でのアリーの成功に悲しみが止まらない。

これは成功物語でも、ラブロマンスでもなく、癒えない心の傷の物語だ。


やや全体が長く感じるのは、ガガサイドから注文でもあったせいか。

カット割り、シーン構成を整理しなおせばもっとよくなる気がしてならない。

そこがもったいないけれど、間違いなく何度もリメイクされただけはある良作だ。



この作品、タイトルで損をしているような気がしてならない。

このタイトルを見て連想するのはC調映画で、

決して仄暗いエンターテイメント業界の裏側を描いたものではないはずだ、と思える。

原題も「A Star Is Born」とあるので、邦題にそれほど飛躍もないらしい。

ラノベ界隈ではタイトルがもうあらすじそのもののものが多く、こんなタイトルをつけてしまえばどれほど中身が面白かろうと、起きるミスマッチに即ページは閉じられることだろう。

ここで思うのはタイトルに代表されるような、観る前の人にいかに中身を伏せて内容を知らせるか、についてである。または宣伝広告についてというべきか。

ひとつ、正攻法があり、むりならミスリードでも引っ張ってきて、とにかく見てもらうが思いつく。

モノカキの場合、果たしてゴリゴリの純文だったとして、もしかするとその作品を読むことで純文への目が開く読者がいるかもしれず、そんな潜在的読者のためにもミスリードはアリだと思え、

目の肥えたターゲット層に対しては本編に触れた時、がっかりさせない程度につまびらく、あたりだろうか。

そうなれば本編でのあれやこれや、仕掛けは仕掛けで大いに仕掛けておくとして(くどい)、

それ以外にももう一発、二発、注目してもらうための手段を用意しておかねばならないことになるだろう。

本編での仕掛けは優等生を要求されるが、おそらく後者は遊び心がなければ難しそうに思う。そして両者が合わさった時、ひねりの効いた味が出る。どちらから覗いても面白味のある作品になるのではないかと、

有名な過去作(古典)のリバイバルでありながら、ポップの女王レディーガガを登場させた本作に、想像するのである。



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