メリー・ポピンズ リターンズ ー19.2.2.

監督:ロブ・マーシャル


 

「身を美しく、賢く生きる方法」

日本にはあまりなじみがない人、それが「ナニー」だと思う。

本編でも和訳は「教育係」となっていたか。

「乳母」やら「家庭教師」とも解釈できそうだが、

はっきり言って当てはまる日本語が見当たらない。


そんなナニーであるメリーポピンズが子供たちに教えるのは、

教科書を片手にした算数や国語ではなく、身だしなみでありあらゆる局面での振舞い方だ。

それはまさに生きるうえでの知恵にほかならず、

素晴らしい人生を送るための哲学そのものだろう。

それも頭で理解するのではなく、体で覚える方の。


どのシーンも計算され尽くされた絵画のような仕上がりで格調高く美しく、

二時間越えの本編もあっという間。

もっとメリーポピンズとレッスンを重ねたい! 

そんな気分になる映画だった。



古典のミュージカルにはそうなるだけの完璧さがある。

というか後続は、これを手本に亜種と刷新されていったのだから、原型である古典的ミュージカルに手落ちがあるはずもない。

ちなみにわたくしは、かつて見た中で「レ・ミゼラブル」絶賛派であります。

その焼き直しという本作。

かなり攻めていると思われる。

唯一勝機があるとすれば、当時なかったCGを駆使することで、

あのファンタジックな映像のクオリティーを上げる、という点においてだろうか。

ということで確かに絵ヅラは過去作と段違いに夢の空間と仕上がっていた。

けれどそれが案外、フルCGではなく、ふんだんに実写も含まれているらしいという点がミソだろう。

なんというか、どれほどスゴイCGでも、やはりまだどこか実写には足りないのだ。「進撃の巨人」も「シン・ゴジラ」もCGで片付けてしまわず、実写が随所に織り込まれることで迫力と生々しさを保ったように。

ということでオハナシカキに落とし込むならば、ファンタジーやSFという非現実世界を扱うさいに当てはめられるのではないか、と考えるのである。

たとえそれがこの世のものであらざるとも、どこか端々にちょびっとだけでも非常に現実的な、いつも触れて見ているようなモノを混ぜ込む、当てはめる、意識することは、ツクリモノへ説得力を、存在感やリアリティーを与えるのではないかと想像するのである。

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