ファースト・マン ー19.2.10.
監督:デイミアン・チャゼル
「これは狂気の沙汰」
NASAが舞台の映画はこれまでに幾つもあれど、
ここまで定番である「ミッションの成功」と「栄光」
からハズレたものはないだろう。
そしてその視点はあくまでも見守る第三者のものであり、
第三者にとってそうあってほしい姿だと気づかされもする。
初めて月面着陸に成功したニール・アームストロングについてを追った
この作品は、徹底的に当事者視点を貫いた作品だ。
なら見えてくるのは無茶ブリに体当たりで応える人体実験の数々で、そこにあるのは緊張と恐怖の連続でしかなく、「好奇心」や「栄光」だけで乗り越えることの難しさを見せつけられる。
しかしながら偉業を成し遂げた主人公を支えていたものこそ何だったのか。
この点がおそらくつかめそうでつかめないテーマだろう。
無茶なミッションに挑むには、相応の激しい動機がある。
手放しで喜び終われない本作の切り口に、脱帽する。
それにしても冒頭から怖かった。閉所恐怖症になりそうだった。
ついに民間の宇宙旅行会社が本格始動を始めた昨今、
この作品との対比は凄まじい。
思えば知的にクレイジーとなるのはどういうことか。
先駆者のある種、イカレた感じが印象に残る。
オハナシ書きの中でキャラクターの原型、パターンはいくつかあれど、
その中で一番、表現しにくいのは「天才」「優秀」というタイプだろう。
なにしろ大半の書き手にとってそれは、自身の範疇を越える存在だからで、どうすれば示せるのかもまた自身の範疇の外にあるからだ。
こと、知的好奇心極まりクレイジーなどと、登場人物が何を考えているのかほとほと想像しづらいものこそない。
ただ本作から表現の可能性を見出すに、ハードボイルドならいけるな、ということである。
心情吐露せず、淡々と行動で示す。
あとは書き手がそんな登場人物の行動力についてゆけるか、だけだ。
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