グリーンブック ー19.5.1.

監督:ピーター・ファレリー



「安全な旅の秘訣は」

人種差別が今よりもっとあからさまとあった時代、

ハイソな黒人音楽家の全米ツアーを安全無事に完遂すべく、

雇われた超庶民で腕っぷしの立つイタリアあんちゃんとの旅が始まる。

はたして色んな意味でデコボココンビの関係の行く末は。


出ずっぱり、教授とトニーの魅力で物語を引っ張り切る。

そんな二人は相容れぬ世界と価値観に住まう者同士。

けれどだからこそ、あこがれ、かなわない部分を互いに持ち合わせる者同士だ。

だからしてなんだかんだありつつも、

その実、素直に認め合っている二人がとにかく人間臭くて可愛い。


時代、文化に絡め取られることなく、わたしとあなた、それだけを背景に向き合うこと。二人のタフガイが、その豊かさを教えてくれる。


つまり例え地球の果てへ旅に出ようとも、安全で素晴らしい旅の秘訣はガイドブックになど載っていなのである。

「リスペクト」これに限るのだ。



グリーンブックとは、当時、黒人が旅行をする際、

利用できる宿、安全に過ごせる地域などをまとめたガイドブックらしい。

映画を通して初めて知ったが、それほど白黒はっきり分けられていたのかと思うと、ちょっと考えられない気持ちになった。

この作品と記憶が混同しがちになるのが「最強のふたり」なのだが、

いずれも見どころが肩書や、見た目に左右されることのない人対人の付き合い、

ヒューマニズムにあり、登場人物の設定が違っているだけでほぼ物語の展開、骨組みも同じだ。

しかも確か双方共、実話ベースだったはず。

ということは王道なのだろうが双方共、良作と引けを取ったり埋もれたりすることがない。

ひとつ、普遍的なテーマが勝因だと思えるし、物語の展開パターンが同じだろうと具体的な見せ方がうまいのだろうな、とも感じた。

特にグリーンブックの最後は切なさからの大団円は、時間の流れの扱いが絶妙である。

あの虚無の「間」がくどければわざとらしい感動になりそうだし、短すぎると葛藤に重みがない。

モノカキの場合この時間の経過を文字で演出するわけだが、見習いたいなと思った間合いだった。

のみならず、やはり王道強し。

王道をうまく料理し、オリジナリティーを醸し出せたなら勝るデキはないと、確信しなおすのである。


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