いぬやしき ー19.10.4.

監督:佐藤信介



「ドラマ部分に引き込まれる。」

原作未読。

案外、登場人物が多い。

しかしながらどの人物も際立っていて、ごちゃまぜになるどころか余剰感もなく、きっちり記憶に残るあたりとても好感が持てた。

特に悪役の心理描写には、共感を呼びつつ非道を突っ走らせるさじ加減が、物語をいい具合に引っ張っていると感じる。

あらゆる面で対照的な二人が対決するラスト30分も、それまでの静けさを破る疾走感満載ですっぽ抜けることなく見ごたえがあった。


とはいえ見どころはアクションというよりドラマ部分だとしか思えないほどのノリさんの好演に、佐藤くんの怪演がよい。



日本映画もハリウッドなみに、の分かりやすいテコ入れ部分でCGがある。

「リターナー」を見た時、おおっ、と驚かされたのが最初だったか。

そこから数十年。

戦闘シーンでのCGはさすがに日本もここまで、と思わせる作り込み加減がある。

こうしたあり得ない絵ヅラをリアルに見る機会は、文字に変換するとき案外、役に立つと感じている。

なぜならすでにCGに変換する地点で第三者の味付けがなされ、より「らしく」見えるよう誇張されているためだ。なのでどこをポイントにどう描写すれば効果的か、が目に見えて理解しやすい。

またこの作品、冴えないオジサンがモノすごいことになるわけで、このギャップも見どころにある。そのためドラマ部分がよいと前述したように、ギャップを際立たせるなら(大きく落差をつけるなら)手は抜けないはずだよな、と考える。

特にエンタメ作品は観客を引き付けてナンボ。

あのオジサンがついに! とうとう! と言わせなければ盛り上がらない。

文字に落とす時もだからして、たとえ派手な戦闘シーンを山場に、ここを一番書きたいのだ、と力んだところで的外れで、

力点は案外、そこが華々しく見えるよう周囲を固めておくところにあるのではないかと思ってもみたり。

その方が「派手な戦闘シーン」を七転八倒して書くよりも普通に書いたところでメリハリがつき、単純、凡庸だが見栄えするものになるのではないか、と考えるのである。

あまり凝ったところで凝り過ぎて理解されなかったり、テンポが悪くなっても本末転倒ですし。

そのいい例がこの作品ではないかと感じた。


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