クソ野郎と美しき世界 ー19.10.6.

監督:園子温, 山内ケンジ, 太田光, 児玉裕一



「失われたものと、回復の物語」

言わずと知れたジャニーズ事務所を飛び出した3人が主役を務めるオムニバス映画。

繋がっているようで繋がっていないようで、の四部構成はワタクシの大好きな構成である。


そんな本作は、上映された時期を背景、文脈として見る場合と、

単体としてみる場合の二層仕立てが可能な作品と感じた。

そういう面ではかなりハイテクニックな構成の印象がある。


オムニバス作品ゆえ、それぞれ監督も異なることから途中、ガラリ雰囲気も変わり、映画を見慣れていなければついてゆくのが大変かも。

単純に娯楽作品だと思ってかかると痛い目をみるかもしれない。

ゆえに嵐のような1作でもあった。

ともあれ個人的には見ごたえがあり、二層とも最後まで楽しめている。



監督が違うとまあ、画面の色も匂いもテンポも何もかもが当然ながら違う。

こうして並べてひとまとめに見ると、ひとくくりに映画と言えども人の数ほど、

を感じずにはおれない。

オムニバス中、一番、面白味を感じたのは草薙さんのパートだったか。

って考えると監督は爆笑問題の太田さんということになるのだが。

本来監督業ではないせいで個性が際立つことになったのかもしれない。

わたくしがオハナシを書く時、こうした「監督の違い」を作品のカラーとして必ず意識する。

することによって膨大な選択肢からコレ、を選び抜く材料ともするし、

ある意味、選択の根拠をいくらか自身の外におくことで、自分を俯瞰できたりする。

ウマイ人なら必要ないだろうが自身に全体重を傾けるとヘタな分、

どうしても自己愛マシマシになるというか、

陶酔のキモチ悪さが出てならない。

そして人の分だけ映画があるように、どうにかバリエーションを保つことにもつながっていると感じている。

こうした主役が多い作品を見ると、キャストも監督も、物語のジャンルも、本当に多面的かつ多様性がもつ膨大な可能性について巡らせてしまう。

「言う」内容を決めたならどう「伝える」のか、最後は手数だな、と。

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