チャッピー ー19.10.7.

監督:ニール・ブロムカンプ



「人工知能だけの話ではなくて」

言葉を覚えることから始まったチャッピーの知的活動は、

自己が言葉と世界(環境)の二重らせんが生み出した「生物」だということを連想させる。


生み出されたがゆえに自身の物語を見出し、

生きてゆく過程に「何が誰を作り出すのか」、

成育歴のモデルケースを見ているようで興味深かった。

(このあたりは目次上記にある「レ・ミゼラブル」とテーマが似ている)


監督独特の全員どこか悪党めいた登場人物たちに

本能剥き出しの疾走感も健在ながら、

過去作に比べてマイルド路線の本作はSFというよりファンタジーめいていて、

気楽に見ることができたように思う。


ぬるぬる動くチャッピーの自然さに、もう違和感も驚きも忘れ去るという画面の仕上がりもまた必見。



キョーレツだった「第9地区」。続く監督の新作ということで鑑賞する。

環境が人を作る、は上記にも記したように「レ・ミゼラブル」とおおむね同じで、

人は五感をもって日々、適応、学び続けているのだということを改めて思い知る。

もちろん学ぶ理由は生き延びるためで、

殺伐とした環境ではやはり、それなりに仕上がってゆくほかなくなるということになる。

つまり犯罪をなくすため、犯罪者一人一人を罰してもたいして変化は起きない、

ということだ。

だがたいていは殺伐としている場所をコントロールするために、さらに殺伐さへ輪がかかる様子でこれが難しい。

物語の中で掃溜めにツル、のようなヒロインが登場したりすることがままあるが、

以上の論理から考えるとソレ、おかしくね?

になるわけで、そういう牙城を崩すのも悪くないな、と今ふと、思いついた。

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