映画大好きポンポさん ー21.6.30.

監督:平尾隆之



「モノ作る人の地獄と天国を」

原作漫画をピクシブでチラリ、読んだ程度。


いわゆるお仕事モノだと思われるが、

やはりモノヅクリ、それも映画となれば特殊だ。

そのアートな側面とビジネスとしての側面と、個人の能力とチームの力を

苦悩と成長の物語として

本当に分かりやすく、そしてエキサイティングに仕立てた作品だった。

ダイナミックでポップでスピード感あるアニメーションも音楽のようでよかった。

これは「物語を作る人」なら本当に、見ていただきたい。


キャッチーな外見だからこそ耳にするり、と入ってくる名プロデューサー、

ポンポさんの名言は聞き逃せない。

(おそらく外見がオジサンだったらば高圧的、上から目線ばかりが強くなったに違いない)

初監督に縮み上がりながらも奮闘する主人公には、わたくしのようなモノカキ素人だろうと共感の嵐が吹き荒れる。


中でも一番胸アツだったのは編集パートだろうか。

選ぶということは、大事なもの以外を切り捨てること。

捨てる作業が編集なのだ。

それまでの情熱をここで一気に冷やし、

論理的に進める作業に宿る確信こそ、作品へ魂を吹き込む。


それにしても「バクマン」もそうだったが、

監督を務めた主人公はここでも大詰めで倒れている。

それが程度のたとえだとして、命を削るほどだからこそ素敵な作品が出来るのかと思えば、見る方としては切ないな、と思ってみたり。

そして作中のセリフには監督、庵野さんがかつておっしゃっていた言葉ともかぶる所が多く、

そちらもやはり、と思ってしまった。


追記

のち、ピクシブで公開中の原作を読む。

スキだと上げた編集パートのほとんどが原作になかった。

(他にももうワンシーン、明らかにない部分がある)

後付けにもかかわらずそこが一番、アツかったというのは、

まさに映画化して「勝った」証だなぁと思う。

アッパレ。



さて戻って、切り捨てる作業はモノカキにも改稿、という作業において共通していると考える。

長編が好みのわたくしとしては、本当は入れたいあれもこれもがありつつも、

初稿から切ったものもあれば、二度三度、読み直すうちにテンポが悪い、

意味がない、と泣く泣く切ってゆくこともありで、本当に共感してしまった。

そして全体を整え、ただなぞるだけの現実から観る者を意識した商業作品へ、

と押し上げるためにこの作業こそ必須で、

過程でどの部分を残し、どこを切るかのキモ、基準へも触れている本編に、

またもやヤラレタ。


敏腕プロデューサー、ポンポさんが、主人公ジーン君を見込んだ理由が、

一番、目が死んでいたから。

という所も好きだ。

現実世界で満たされていな人間が掘る、精神世界の広さが作品を奥深くさせる、と。

わかる。

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