2分の1の魔法 ー20.9.30.
監督:ダン・スキャンロン
「魔法は誰の中にも眠っている」
コロナのおかげで上映不遇の1本をやっと鑑賞。
まず設定が面白かった。
近頃のディズニーの定番、社会問題を織り込みつつ展開させるファンタジーの中では最もありきたりな世界観ながら、だからこそひねった設定がほどこされており楽しかった。
物語は、今はもういない父を魔法で期間限定、蘇らせたはいいけれど下半身だけだった。全身を蘇らせるべく兄弟の冒険が始まる、というもの。
喪失感がテーマとして挙げられつつも、満たし、再びそこへ火を灯すものとして
「それぞれに与えられた魔法の復活」というメタファが、
己が能力(魔法)を生かし「いきいきと生きる」ことの大切さを教えてくれる。
わたしが、あなただけが使える能力、「魔法」とはいったい何なのか?
あるに違いない、と思わせてくれる作品を前にしたなら子供も大人も無関心ではおれまい。
安定の家族愛もさることながら、ラストのほろ苦さも憎い良作と観る。
あ、よく考えたら足でコミュニケーションをとるなんて先見の明。
ものすごく今風なソーシャルディスタンススタイル。
求める、が目的なら、足りない、が前提であるのは当然で、
足りない物が何なのかが、たいていの物語のキモとなる。
それがカタチあるものであれば初級で、ないものになればなるほど上級者向けだろう。
本作は上半身が「なく」、父親が「なく」、そして上記の二つに隠れた目立たぬ場所で自信が「ない」。
この三つを同時、同等に扱い、求め、埋め合わせようとする展開はなかなかハットトリック。さすが、うまいなと感じてしまう。
こんな具合に屁理屈をこねて考えずとも、ごくありきたりな構図ではあるが、モノカキでも意識してこのハットトリックを披露できたなら、ちょっと奥深い物語が紡げるのではなかろうかと感じたりもしている。
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