Away ー21.3.10

監督:ギンツ・ジルバロディス



【影とボクの寓話】

輪郭線のない絵に、少し黄ばんだ色合いのアニメーション。

セリフなく進む物語と、そこに漂う独特の間合い。

それでいて大胆なカメラワークが静かなハズの物語を、

とても迫力満点と演出している。

登場するキャラクターや道具に文化、生活の違いから来る独特のチョイスを感じる。

だからか、ファンタジー感もマシマシだった。


物語には「恐怖からの逃亡」という命題を感じて止まない。

ゆえに静けさも込みで、少し恐ろしくもあり。

しかしながらその「恐怖」が何なのかは具体的に明かされておらず、

映像の美しさと冒険物語にラッピングされた「恐怖」は

まさに寓話的だった。


映像に見ほれつつ、さらっと鑑賞することもできるが、

登場キャラクターの数も多くないだけに意味深長で、

おそらく考えれば考えるほど奥の深い作品なのではないかと感じている。


一番怖かったシーンは、飛行機の中をのぞくシーンだったかも。

トラウマとの対峙。

どうしても「戦争」という言葉が頭から離れなかった。


こうしたある種抽象的な作品を見るたび、

その背後にいかに具体的、個人的体験が潜んでいるかどうかが

夢物語を荒唐無稽に終わらせないカギだなぁと感じる。

芯、骨になる現実を含んでいなければ支離滅裂、

こうも説得力は生まれず、

だがしかしむき出しとじかに語れないからこそ夢物語と、

覆い隠され続けて物語は成立している。


つまりこうした作品ほど雰囲気、だけでは生み出されることがなく

よく意味の掴めないボンヤリした物語ながら統一感がブレないものほど

実は写実であり明晰な表現なのだ、と考える。


リンゴを表現するのに、リンゴを撮影するように

具体的なものを具体的(リアル)に表す方がほよど簡単、

というヤツだ。

モノカキにもこれは本当に、応用できるといつも思う。

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