エイブのキッチンストーリー ー21.2.17.
監督:フェルナンド・グロスタイン・アンドラーデ
「見知らぬ料理が一堂に会する!」
ユダヤとムスリム。
言われたところでピンと来ない日本人だった。
正直、似て非なるものとさえくくっていたが、知っての通り、両者の間には因縁の歴史が。
双方の血を引く主人公のボクが、一族そろって楽しく会食できるよう新メニューを編み出すべく奮闘する物語は、
ともすれば血生臭くもなりがちなテーマを何ともポップでナイーブ、かつ爽やかに仕上げている。
いや、主人公世代の視点からすればそんな風にカテゴライズ、
処理されてしまう煩わしい出来事でしかないのかもしれないと思ってみたり。
そこへまさにスパイスと絡む料理の数々が興味深かった。
惜しむらくは匂いがまるで分らない事だろうか。
それこそ映画の弱点と残念でならない。
食は文化であり、アイデンティティでもある。
見たことも食べたこともない劇中の品々に覚える違和感こそまさにその表れで、体感できる異文化そのものと分かりよかった。
代理戦争にもにた構図は、「おいしさ」が取り持つだけあり平和的。
「対人」独特の血生臭さから縁遠い理由はそこにあるなら、
そうした立ち位置を取れる主人公のような存在こそ、
軽やかな未来を創るに相応しい人物像なのではないか。
そうしたメッセージを感じる1本だった。
エグいものが多い中、思い切った振り幅に拍手。
少しご都合主義なところも、いい味だ!
味覚嗅覚は記憶と直結しているため、小説中における食の表現は読み手へダイレクトに訴えることができる。
ちょいと卑怯なワザではあるがかなり有効だと以前から感じ、一作中に象徴的な食事シーンを入れてみたりしてきた。
だが一皿に込められた味や匂いや形だけでなく、文化背景や食する意味、歴史というだけの時間の束に、食べ繋いで生きてきた人の数。
個人的な「おいしい」の外へも、本作のように飛び出して食を扱ってみるのも冒険かもしれない、と思わせる一作だった。
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