第2話「事件を始めよう」
真夜中、時計の針は12時でピッタリ。
そこで事件は起こっていた。
「ひ、悲鳴ッ!?」
眠っていたルーチェは顔を真っ青にして飛び起きる。
扉を蹴破ったかと思ってしまうほど勢いよく開き
駆ける。
「ま、待て待て!待てって、お嬢!!!」
「行かせて、アラン!!ちゃんと向き合わなきゃいけないから」
最後の言葉は何処か沈んでいくように感じた。アランの横をすり抜けて
ルーチェは階段を駆け上がり3階にある父の部屋にやってきた。
「お父さんは!?」
倒れている死体には首が無い。その死体の近くにはミトスがいた。
彼は立ち上がりルーチェに目線を合わせる。
「この死体は違います」
「え…」
「が、死んでいるのは事実です」
ミトスは頭が良い。冷静沈着だ。ルーチェはそんな彼を見習って
深呼吸をする。鉄のような臭いに少し顔を顰めた。ミトスはもう一度
身を屈めて服を捲った。自身の胸部と死体の袖を捲る。
「僕たち悪魔は人間と契約をする。その際にはこのように紋章が現れます」
「契約の証?」
「そうです。私は貴方のお母様と元々は契約をしていましたがお父様は
魔術を使って私と再契約をしました」
そんなことが出来るのか、非常識的だがそれを常識として考えるしかない。
そういう存在なのだ。
「あ、もしかして悪魔って契約主の事が隠れてたり離れてたりしても
分かっちゃうみたいな!?」
「流石、鋭いですね。ルーチェ様。その通りです。吸血鬼様もどうぞ
中に入ってください」
窓の外から盗み聞きしていた吸血鬼アインは堂々と入ってきた。
「随分と丸くなったな
「そうですか?」
「珍しいでは無いか。七つの大罪を司る悪魔がこんな人間と
契約し、縛られているなんて…」
知り合いなのだろうか。人外同士、繋がる物があるのか?
「なんだ、知らなかったのか?ルーチェ・エスメラルダ」
「うん。割と最近になってからミトスとアランが悪魔だって知ったし…」
「そんな名前で呼ばれていたのか」
「人間の世界で生きるんだから、人間として振舞った方が便利なんですよ」
悪魔としての名前を使うよりも偽名を使い人間として
生活する方が生きやすいに決まっている。話は戻って、首の無い
死体に目を向ける。
「持ち去ったんでしょうかね。凶器がありませんよ」
「調べられるのも困るのか、それとも―」
「―人間じゃない、とか…?」
アインの言葉を遮ってルーチェが告げる。彼がルーチェに目を向ける。
「ち、ちち、違うんです!これはその…すみません!」
「…やるでは無いか人間。憤怒、お前はこの人間にどうやって
正体を明かした?」
「え?明かしてませんよ?」
「はぁ?」
予想していなかった返答に流石のアインも困惑した。
「私は聞かれて頷いただけですよ」
「聞かれた?」
「そうですね…正直、貴方に御嬢様を舐められたままだと僕も納得
いかないので話しましょう。彼女を普通の、平凡でつまらない人間だと
思わない事です―」
それは1年前の事。
裏設定だ。こうやって回想が入るのはシナリオ通りだ。
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