第3話「執事の情報を聞こう」
原作を作った人間なのでどういったトリックがこのゲームで
使われているのか分かっている。犯人も分かっている。
主人公はそこまで頭が良いタイプではない。並々程度。
傲慢不遜で頭脳明晰な吸血鬼の言葉一つ一つが彼女の
心を抉っているのだが。
そんなことは四の五も言わせねえ!!
あの傲慢吸血鬼よりも先に事件解決をする!!
「…で、どうしたんだ。御嬢、その格好だと探偵だぜ?」
「そりゃあ探偵になる気満々だから」
「正気か?まさかこの事件を解決しようって考えてるんじゃあ無いだろうな?」
「お、正解」
アランは長い溜息を吐いた。
「随分と変わったなぁ…1年で人間は充分変化できるって事か?
それにしては変わりすぎだろ」
大人しく、自分から滅多に行動を起こさない少女が突然アグレッシブに
行動を始めた。こんな状況だからこそ不安だ。
「ミトスは」
「いますよ、僕は。契約は貴方に委託されたみたいですし」
「えぇ?それって契約主が私になったって事?」
「そうですよ。まぁ、前の契約者との契約が今もありますが…」
それなりに強い命令なのだろうか。
それは兎も角、ルーチェは早速行動を始める。この事件の犯人を彼女は
知っている。しかしあの吸血鬼を納得させるためには色々と下準備が
必要だ。
「絶対に殺人が出来ないのはアランとミトス。それと血が苦手な
ナナリーだね」
「俺とミトスは契約で縛られてるからな。で、ナナリーは血は苦手だし
あの死体を持ってこれるようには思えない。御嬢と同じで筋力は皆無だからな」
成人の男を動かすにはそれなりに力が必要になる。確実にナナリーと
ルーチェが外れる。ミトスとアランはこの屋敷の住人を殺すことは
出来ない。契約らしい。
1.主人に逆らわない
2.無許可で殺人を行わない
それが今分かっている契約内容だ。
「僕とアラン、ナナリー、ルーチェ様。4人は確実に白ですね」
「そういえば、真夜中に色々出歩いているのは…」
「俺とミトスだ。睡眠なんてする必要が無いからな。こんな暗い場所を
脆弱な人間の女に任せられるかよ」
「アラン、意外と優しいんだね!」
「やめろ!」
照れ隠しだ。こういうのは面白いので暫くそのままにしておこう。
犯人になることが出来る人間の中にはシェリアがいる。
「でもなぁ…信じたく無いなぁ、シェリアは違うと思いたい!」
「駄目ですよ。名探偵がそう思うなんて。そう思っているのなら
まずはシェリアが旦那様を殺すことが出来ないと証明できる証拠を
集めましょう」
「そっか!」
まずは色々な証拠を集めるべき。情報は大切。それをもとに
殺人が可能かどうかを判断する。
「そうと来たら夜に出歩ける俺たちがまずは事情聴取されて当然か」
「そうですね。ではしっかり昨日の夜の出来事を伝えましょうか」
「私が起きる前。アランとミトスと私が離れたのは夕食の後だね。
そこからしっかり話してもらうからね?嘘はダメだよ?」
これは当主命令です!とルーチェは胸を張って言う。
はいはいと軽く流しつつ二人は話し始めた。
◆
僕たちは御嬢様が昼食を終えた後、夕食の片づけをしました。
その時にはメイドの二人も一緒にやっていましたね。
分かれたのは御嬢様が寝る時間になったとき。
シェリアとナナリーは交互に担当しているのです。その日は
ナナリーが担当ですね。
シェリアとはナナリーが御嬢様のお部屋に向かった後から別れました。
「…?今、何か聞こえなかったか?」
「あー…何かが割れる音だな。花瓶とか窓とか」
夜10時ぐらいでしょうか。何かが割れる音が聞こえたんです。
◆
「あれ?」
最後の言葉にルーチェが首を傾げた。
「何かありましたか?」
「割れる音…。そういえば首無しの死体があったお父さんの部屋の
窓って確か…」
散っていた鋭いガラスの破片。
「はい。そう考えることが出来ますね」
「じゃあ犯人は窓から入ったって事?犯人は屋敷の事を知っている人って事に
なるよね?」
「念のためにどうしてそう考えたか教えてもらっても?」
ミトスの言葉にルーチェは頷いた。
「扉から入ることも出来るけど、それが出来なかったんじゃない。巡回が無ければ
そして鍵がかかっていなければね」
「犯人が身内なら鍵だって持ってたかもしれないぜ?」
少し意地悪をするアランの言葉も否定する。
「鍵があっても入れないんだよ。巡回してるアランとミトスがいるからね。
二人も巡回してるんだからそれぞれ分担して見回ってるに決まってる。
堂々と入ったら怪しまれるに決まってるでしょ」
今、二人はルーチェに嘘を吐けない。それを踏まえてルーチェは確認する。
「―ミトス、アラン。二人のうちどちらかが一階を見回っていた?」
「あぁ。俺が見回っていた」
アランが答えた。蝋燭の火を灯して見回っていたので灯りは僅かながら窓から
漏れていただろう。
「なら相手は人間を殺した後に死体を持ち、窓から入った。少し引っ掛かりは
しないか御嬢」
アランは笑みを浮かべて疑問を彼女にぶつける。
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