四章:召喚魔の里帰り
対面
窓の外で幾度となく稲光が走る。
発光と、大地を震わすほどの轟音とは常に同時だった。
床から天井まで届きそうな大きな窓。雨粒がしきりにガラスを叩き、強風で振動する。季節外れの大嵐が、城と街とを覆っていた。
そう思った直後、リアは緩慢に首を振る。『季節外れ』は先日までリアがいた世界のことで、こちらでは良くある悪天候に過ぎない。
室内は、豪奢な燭台によって温められていたにも関わらず、いやに暗かった。鼻の次に鋭敏なリアの視覚も、明瞭なのはせいぜい手元ぐらいなもので他は暗闇に沈んでいる。
またも雷がリアの顔を照らした。折しも窓に向けていた視線を手元へと戻し、止めていた手を再び動かした。
今は、夕食の最中だ。
虚ろな瞳で皿に盛られた肉を見下ろし漫然とナイフを入れる。上質で、柔らかい。数回往復させるだけ切り取られた一片をゆっくりと口へと運び、口を動かし、ほどなくして飲み込む。食材も調理も文句がないほど一級品ながら、食べることが流れ作業になってしまって食事は実に味気ない。
リアが座っているのは長テーブルの短辺。長いと言っても生半可ではなく、反対側は見通せないほど。
実際の距離と部屋の暗さもあるが、何より見たくないという心理が、リアの表情を小さくなり角度で俯かせ続けている。
『――それで。そのあとはどうなったのだ』
その対面の暗闇から、声が掛けられた。
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