屋上と彼女。

「でもねぇ、キミがもしあのとき断ったら、ここに置いてくつもりだったのは内緒ね?」


『はぁ? ってめぇ、人をこんな所に閉じ込めるつもりだったのかよ!?』 


「当然よ。邪神討伐隊の話は本来、表の世界ではその存在さえも知られることも組織よ。つまり、この話を聞いた時点で『タダ』で帰すわけが無いじゃない。でも、良かった。キミが断らなくて、テヘッ♡」


「テヘヘじゃねーよ! うわ〜、あっぶねぇ! 危うく閉じ込められる所だった……!」  

 

「さ、戻るよ!」

  

 両手を素早く動かし術を再び唱えると、結んだ印を解いて術を解いた。彼女の術が解けた瞬間に周りの景色は、あっという間に姿を変えた。禍々しい重い空気がガラリと変わった。そして、奇妙なあやかしの群れも消えた。元通りの平凡な景色に、一和はホット胸を撫でおろし一安心した。


「話は済んだから、あたしは帰るね! じゃあね一和君!」


「あっ、待てよ……!」


 後ろから彼女を呼び止めると、かなめは振り向いた。そして、意味深なことを話した。


「近いうちにキミが邪神討伐隊に相応しいのか、見にくり人が来るから、その時に色々と聞かれたり『試される』かも知れないけど、キミから無事に合格すると信じてるよ。頑張ってね、一和君。あたし、信じてるよ。キミなら出来るって――」


「おい、待てって……! うわっ!!」


 慌てて動いたから自分の靴紐を踏んだ。倒れて起き上がると、目の前に居た彼女がいつの間にか消えた。まるで風のように姿を消すと、彼は首を傾げた。


「クソ、また逃げられた……」


 彼女はいつも、目を話した瞬間に姿を消した。不思議な少女。『夜刀神かなめ』この2人の偶然の出会いから物語りは大きく動き出す。彼はこれから巻き起こる運命をまだ知らない――。

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soul body!! 成瀬瑛理 @face52

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