屋上と彼女。
「あたしね。本当は、ちょっぴり不安だったの。キミがこの話を聞いて断るんじゃないかと思ってさ……」
「な〜に言ってるんだよ。この俺が断るはずねぇだろ? それにこんなおもしれー話し、なかなかねぇしさ。邪神だが魑魅魍魎だか妖怪だか、よく分かんねーけど…。悪霊だとか幽霊退治とか面白そうじゃん! その話し乗ってやるぜ! それに思いっきり妖怪相手に喧嘩出来るなら、楽しそうじゃねーか!」
一和は能天気に話すと自分の拳を手のひらで、バシッと鳴らした。それを見て彼女は呆れて一言話した。
『あっ、あのねぇキミ……! 邪神退治は言っとくけど遊びじゃないのよ! もし、一歩間違えると死ぬかも知れないのよ!?』
「んじゃあ、死なねーように戦う! それで文句ないだろ?」
余りのも馬鹿さ加減に拍子抜けすると、かなめは目の前で思わず可笑しそうに笑った。
「ぷっ、あははははっ! キミってば、ホントに能天気屋さん!」
彼女が見せた素敵な笑顔に、一和は何故か胸がときめいた。一瞬、この胸の高鳴りは何なのかと自分の胸元を手で触って確かめた。
あれ……? 何だ今のは? 誤作動か?
「よし! 話も済んだし、そろそろ戻ろうか?」
そう言って彼の顔を無邪気に覗き込んだ。一和は急に慌てると瞳を反らした。
「ん? どうしたの? 顔真っ赤だよ?」
『……うっ、うっせーな! 何でもねぇよ!』
「ふ〜ん、そう。じゃあ、術を解くよ」
「なぁ、俺達の住んでいる人間界にはこの魔界に来れる奴は何人居るんだよ? これってアンタにしか出来ない事か?」
「何よ、急に?」
「いや……何となく? こんな奇妙連中が住んでいる魔界に取り残されたら、普通に絶望的だろ。アンタしかここに行く事も帰る事も出来ないなら尚更だろ」
「――そうね。この術を発動出来るのは、僅かにしかいないわ。それも神に『選ばれた者』にしか出来ない術よ。これは禁呪の術とも言っても過言ではないわ。本来この術を知っている者は少ないもの。そして、この術を扱える者もね……」
「おい、待てよ。じゃあこんな事を出来るアンタは一体何者だ? 俺達と同じ人間か? それに、神に選ばれたモノって一体何なんだ?」
その質問に彼女は一瞬、悲しそうな瞳をした。何故か、その瞳に胸が痛くなった。
「……ごめん、今のは無し。忘れてくれ」
「あたしもキミ達と同じ人間よ。ただ、たまたまこの術を扱えるだけよ。それに安心していいわ。魔界に来る事なんて滅多に無いもの。この術は、簡単そうに見えて結構体力使うから長くは居られないもの。せいぜい30分か1時間が今は限界。それ以上使うと身体に負担がかかるわ」
「そ、そうか……?」
その言葉に一和は顔を引きつらせた。
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