屋上と彼女。

「貴方が今見ている風景は、あたし達にとっては裏の世界。もう一つの世界と言ったら分かりやすいかしら? そして、あたし達の世界は表に存在する。裏と表の世界が表裏一体となり、あの世とこの世を結んでなりなっている。あたし達は彼らが住んでいる世界を『魔界』と呼んでいるわ」  


「魔、魔界……?」


「ええ、そうよ――。魔界は、いつから『存在』するようになったかは不明だけど。あたし達は、彼らとは決して共存出来ない世界で生きている。それは、彼らも同じ事よ。でも、ある時この世のバランスが崩れた時に一つの歪みが生れた。その歪みは『穴』となり。この世とあの世を結ぶ入口となった」


「おいおい、いきなり何言ってんだよ!? 全然意味わかんねー、俺にちゃんと分かるように説明しろ! っつーか、魔界とかあの世とかこの世とかって一体何だっつーの!」


「キミ、人が説明してる時にちゃんと話を聞きなさいよ!」


 かなめは一和の頭をボカッと叩くと、そこで呆れた表情でため息をついた。


「……要するに、この世界にはあの世とこの世が存在し合って私達が住んでいる世界を『人間界』彼らが住んでいる世界を『魔界』と呼んでいるの。裏と表の顔がこの世にあって、あたし達は、互いのテリトリーを侵す事なく、上手く共存して成り立っているのよ。でも、ある時そのバランスは崩れたの。そして、どこかにあの世とこの世を結ぶ小さな穴が生れた。それがどこにあるかは、あたし達には分からない。でも、その穴が出来た事により。時々だけど、この人間界に魑魅魍魎や妖怪が現れるようになった。彼らは姿を現さずに人に取り憑く事で人間に色々な悪さをするのよ」


「マジか……? それじゃあ、俺達が住んでいる人間界が危ねーじゃねぇかよ」


「ええ、そうよ。あたし達は常に彼らに狙われているわ。彼ら妖怪や魔物達にとっては人間は力を持たない『弱い生き物』だからよ。力が無いからその『弱い所』に付け込みやすいのよ。彼らは人の心の闇に入り込むのが得意なの。そして、取り憑いた人間を操って、色々な悪さや、不幸をもたらす事が生き甲斐なの。そして、時には人間を操って弄ぶだけじゃなく。もっと大きな存在となって、災いや不幸や大惨事を人々にもたらすのよ」


『なっ、何だって…――!?』


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