屋上と彼女。
「いいもの見せてあげるって言ったわよね。一和君。キミに見せてあげるよ、この世界の裏側を――」
かなめは彼の隣で両手を前に組むと、印を結び術を唱えた。
『蛇神眼! 天地反転術式、開!!』
彼女が怪しげな術を唱えた瞬間、周りの景色は瞬く間に一変し、別の世界の姿を現した。夕暮れの空は暗黒の雲に覆われた闇の空へと姿を変え、雲は黒々とした淀んだ色へと変わり、空に漂う空気は禍々しさを感じさせた。そして、稲光の音と奇怪な声が辺りに犇めき合って、禍々しく唸りをあげていた。まさにその光景はこの世のものとは思えないような姿を変えていた。一和は、突然の周りの変化に大きな声をあげて驚いた。
『何だよここ…――!? ここは一体、何処だ! 俺達どこに居るんだっ!!』
一和はパニックになりながら周りを見渡した。すると遥か上空には、見た事もない姿をした妖怪が空を飛んでいた。
「え!? うそっ、アレ一反木綿じゃ……!? 嘘だろ、まじかっ!? 一反もんめが空を飛んでいる! ウソだろ、おいおい……!」
彼は衝撃的な光景に声を上げて、ひたすら驚くばかりだった。その隣で彼女は両手で印を結んだまま黙っていた。
「何だよ何だよ、あの空に飛んでる青い炎は! あれって鬼火か!? うわーっ!! あっちには見たこともないようなでっかい妖怪がいるぞ! おい、お前ここは一体どこ何だよ!?」
大パニックになりながら彼女に尋ねた。すると、かなめは冷静な口調で答えた。
「ちょっとキミ落ち着いてよ。ここは、あの世の世界。今術で一時的に、あの世とこの世をリンクさせたわ。つまりここは『裏』の世界よ」
「はっ? あの世とこの世? 一時的にリンク? 裏の世界…――!?」
「そう。つまりは魔界。私達は今、表の世界から裏の世界を見ているのよ。驚いた?」
彼女はそう言って彼の方を振り向いた。一和はギョッとした表情で釘付けになった。
「あっ、アンタ! アンタその眼、一体どうしたんだ…――!?」
「ああ、これ? 蛇神眼よ。今術を発動しているから眼が変化しただけ。術を解けば直ぐに戻るわ」
「あー、お前やっぱり普通の人間じゃないな!? まさか妖怪人間かっ!?」
「誰が妖怪人間よ! 女の子に向かって、失礼ねキミ!」
「ウソこけ! そんな怪しげな術を発動してる時点で普通の人間じゃないだろ! それに今お前、魔界って言っただろ!?」
「ええ、そうよ。『魔界』よここは。普通の人間が決して踏み入れないような世界に私達はいるわ。あと、次あたしを妖怪呼ばわりしたら、術を解いて貴方だけ魔界に閉じ込めるわよ」
かなめは然り気無く話すと、彼を脅して言い返して黙らせた。一和は『魔界に閉じ込める』と言われると急に黙った。すると彼の側を見たこともないような妖怪が地面をヌメヌメと這いながら、蛇みたいに蛇行して通った。そして、彼のすぐ側を小鬼がスタスタ歩いて通りすぎ。
「ッ……! ここはアミューズメントパークか? 俺は夢でもみているのか? ハハハハッ……」
呆然と佇みながら現実逃避をして遠くを見た。二人の周りには、いつの間にか魑魅魍魎達が集まって寄ってきた。そして、トドメにデカイ顔した妖怪が一和のすぐ横に現れた。
『ウワァアアアアアーーッ!!』
「ちょっと落ち着いてってば……! 大丈夫よ、あたし達の気配は彼等にはまだ見つかってないわ。ちょっと、キミが騒ぐと気配を悟られるからなるべく静かにしてよ!」
「ンンッ!!」
彼女に怒られると、自分の口を両手で押さえて頷いた。
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