第7話 ダンジョンコアと話したよ。
ダンジョンコアと話した。
契約をするときに、「なんでこんな街の近くの崖にダンジョンがあるのに他のモンスターは気づかなかったんだ?」と。
すると、「わからないんです。私の生前がおそらく領主たちに何か深い怨念のようなものがあったのかと…。それが何かはわからないのですが、本能的に街の住人に見つかるのは良くないと思い、ダンジョンを隠していたんです。それなのに、なぜかあなたには見つかってしまったんですよね。不思議です。」
丁寧口調なダンジョンコアの声が僕の頭の中に響いてくる。声は男とも女ともつかない中性的な感じだ。
いつも母さんが突然喋らなくなったり、突然声を出して誰かと話すのはこういう体験だったのか…。僕は気をつけないと。
あれは見ていて驚かれてしまう。だから頭の中で話す癖をつけておこう。
「ところで、僕はダンジョン経営者が何をするのかよくわからないんだよね。ご飯と寝床が有れば僕はそれでいいんだけど…。」
「はぁー、それは大丈夫ですが、ダンジョン経営者には特別な仕事があります。
今からお伝えする内容はダンジョン経営者たちしか知らないことです。例え家族であっても決して話してはいけません。いいですね?」
なんだろう。すごく不安になってきた。さっきまでのおっとりしたような口調が嘘のような消え去り、真剣な様子が声だけで十分に伝わってきたのだ。
「大丈夫だよ。」
「…ダンジョンは、次代の邪神様を決めるために存在します。本来であれば邪神様は不老不死の存在であり、他の神とも同格であるとして、神同士の争いにおいても死ぬことはありません。ただ、神界では現在ドロドロの権力争い、覇権拡大を狙った秘密工作が神たちによって行われています。本来であれば、長年この世界を支配してこられた邪神様と善神様がこれからも支配されるはずでしたが…」
「ちょっと待って!邪神様とか神界とかツッコミどころがたくさんあるんだけど、まずは何でダンジョンコアがそんな裏事情みたいなこと知ってんの?普通知ることできないよね?」
「何を言ってるんですか。」
そんな…、コイツそんなことも知らねーのかよみたいな口調で言わないでよ。悲しくなってきちゃうじゃないか。
「私はつい最近この場所に生まれましたが、生まれてからずっと何もしてこなかったわけじゃないんですよ?しっかりとダンジョン通信を見ているんです。」
おぉー、なんかドヤってるな。
ダンジョン通信が何かよくわからないがとにかく褒めておこう。
「おぉー!流石だな!ダンジョン通信まで読んでるなんて出来るダンジョンコアはやっぱり違うんだな〜。」
父さんがよく母さんに怒られて上手いこと逃げようとするときの話し方を真似してみたよ。
「やっぱりわかります?
私って出来る子なんです。…おっほん。
そんなことより、あなたもダンジョン経営者になったんですから、しっかりと定期的にダンジョン通信を読んで神界のことや邪神様のこと、そしてダンジョンのことを学んでいってください。それがあなたの命に関わってくるんですから。」
ダンジョンコアって感情的になるとピカピカ光るんだな。知らなかった。
「わかってるよ。」
ダンジョンはダンジョン経営者と一心同体。
ダンジョンコアが破壊されれば、そのダンジョン経営者は死んでしまうし、ダンジョン経営者が死んでしまえば逆も然り。これはよく母さんと父さんから聞かされていたからな…。だから母さんと父さんは僕がダンジョンを引き継ぐことに反対で、僕には学者になってほしかったみたいだった。僕は昔から本を読むのが好きだったから。
「ところで、ダンジョン通信ってなんだ?」
「ダンジョン通信とは、邪神様の第1補佐官であるベルゼブブ様が作成なさっているメディアのようなものです。邪神様も善神様も政治の世界には疎くて神界ではすっかりと蹴落とされてしまっているんです。それを何とかサポートしようと活動なさっているベルゼブブ様だからこそ、ダンジョン経営者やダンジョンコア厚い信頼をおいているんです。」
「うんうん。わかったよ。それよりも、次代の邪神様を決めるってどういうこと?」
「そんなことって…。まぁ、いいですけど。
邪神様はさっきも言いましたけど、神界での政争で他の神に敗れてしまったんです。当の本人はそんなことも気付いていないようですけど。しかし、邪神様本人はともかく、後任の邪神様を他の神に任せるのはベルゼブブ様以下職員が反対していて、何としても候補はこの世界から出そうとしているんです。」
さっきから、ピカピカと凄く点滅していて目が痛いんだけど。まだ朝だよ?太陽の光に負けないくらい眩しい存在の君って素敵だよ!
何となくだけど、ダンジョンコアの話はまだ続きそうな予感がする。
はぁ。
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