閑話 モンスターについて
みんな、モンスターで名前持ちはほとんどいないって知ってた?
僕の母さんや父さん、そして僕も名前はないんだよ。みんな「あなた」とか「息子よ、あんた」などいろいろな呼び方で相手を識別するんだ。
だからモンスターがたくさんいる中で特定の人を呼びかけるのはとても面倒くさいんだよ。学校の運動会では、「スライム家のちょっと赤い子」とかが普通。
名前を持てるのはその地域で優秀な人だけ。
それは領主様から名前を頂ける機会があるということだからね。優秀でないと会えない。
おっ?気づいたかな?
スライム家のアオちゃん。そう。彼女は名前を持っている。けど、彼女自身が優秀だと領主様に認められたわけじゃないんだ。彼女の母親が領主様から名前を頂ける権利を得たんだが、それを娘に譲ってしまったから彼女は名前を持っているんだ。
ここだけの話、アオちゃんという名前。
なんか普通じゃない?領主様には絶対言えないけど、適当に付けた感がとてもするんだよね。
そういうわけだから、僕はこれまでずっと親からは「お前、あんた、息子よ」などと呼ばれてきた。他人からは「ゴブリン家の子供」と呼ばれてきたんだよ。
ゴブリンはどこにでもいる種族だけど、ゴブリン家と呼ばれるのはダンジョン経営者の家族だけ。だから僕は名前はないけど家名があるだけ嬉しいんだ。
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