第2話 何でも屋に行ってみた。

「ん〜。ここはどこだろう。」



家を出たはいいけれど、僕って生まれて5年が経つが家を出たことがないんだよな。だから家周辺をグルグルと歩いて30分くらい経ってしまった。そういえば、家周辺のことが書かれた本は読んだことがないな。だったら、今知っている知識をまとめてみよう。


僕の家があったのは、人間の街と離れている草原の中。周りが山々に囲まれた草原で、ここにやってくる人間は冒険者しかいないだろう、と父さんが言っていた。ダンジョンの1階層は、どこも洞窟の形になっているらしく、外からはすぐに見つけられるとも言っていた。ダンジョンに行く時は覚えておこう。草原の北側をずっと行くと人間の街に繋がる山道がある。東側に僕の家であるダンジョン。西側にスライム家のダンジョン。南側には魔王様の王都に繋がる道があって、その道沿いに色々な街があるらしい。


北側は人間の街の方向だから行きたくないでしょ。東側は目新しさがない。西側に行けばアオちゃんに会えるかもしれないけどダンジョンの経営見習いで忙しいだろうからまた今度。だから南側に行ってみよう。

それから2時間ほど歩いていると目の前に街が見えてきた。



なんとなく南側に歩いていると、最初の街ダンベルに着いたのだ。街は城壁もなく、門兵もいない。さらに、街中には牛が放牧されており、とても穏やかな雰囲気を感じる。

オークさん凄いな。トマトの入った木箱を両肩に乗せて馬車に運んで行っている。

あとで食料の買い出しもしないといけないな。そんなこんなで街をブラブラしていると、


「あっ!着いた!」


そう、各街に設置されている「何でも屋」に着いたんだ!

見た目は丸太を使用したログハウスのようだ。これは平家で、とても大きいし広い。

建物の玄関の扉は、どのモンスターも使えるように妖精さんサイズからドラゴンさんサイズまでがズラッと横一直線に並べられている。僕のサイズにあった扉を選んで入ってみる。



中に入ると、ザワザワとしていてとても活気付いていた。入り口から見て右側に、受付のお姉さんが座っている受付カウンターや業務内容の貼ってある掲示板が置かれている。

左側には食料や衣服、銀行など色々なお店が屋台のように壁に沿って設置されている。

屋台で囲まれた真ん中の場所には丸テーブルと丸イスが置かれている。もちろんテーブルとイスは、各種族のサイズに合ったものが置かれているよ。

この時間帯はママさんたちが使っていて昼食をしているね。う〜ん。ドラゴンさんの声は頭に響くね。

さてと、


「あのー、僕初めてこの場所に来るんですけど仕事を受注できますか?どんな仕事がおすすめか聞いてみたいです。」


受付カウンターまで行って聞いてみた。

受付はメドゥーサさんだった。綺麗だな。



「こんにちは。初心者の方向けの仕事説明ですね。金額の良い仕事は、凶暴な冒険者からの護衛任務ですね。でも、護衛任務は「何でも屋」が1人1人「この人は信用でき、実力もありますよ」と認定している人しか受注できないので初心者はできません。それに、金額が上がるということはそれだけ危険ということでもあるので注意が必要な仕事です。

その他の仕事は、冒険者に襲われた時や病院で使うためのポーションの材料集め、子供の子育て保育、買い物代行、屋根の修理などが現在は依頼申請されています。」



そういって、書類をペラペラとめくりながら依頼内容を教えてくれた。



「注意点として、空輸依頼というものや妖精の粉回収など、種族が限定される依頼もありますので、そちらはゴブリンさんは受注できません。お気をつけ下さい。

今行った説明が主要な依頼内容ですが、他にも掲示板にたくさん貼ってありますので、そちらをご覧になってください。私からは以上となります。何かご質問はありますか?」



「いえ、大丈夫です。では掲示板を見てきます。」



そう言って、笑顔で見送ってくれるメドゥーサさんを背中に掲示板へと向かった。



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