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 あれから数日、紗凪の停学期間も残り二日となった日、僕が帰宅すると彼女は部屋に居なかった。この一週間、ずっとだ。そして必ず少しすると、パタパタと帰ってくるわけで。

 何を隠そう、僕の妹だ。


「停学中にあまりウロウロするなよ〜?」

「ちょっと、ね」


 その理由は話そうとはしない。僕としては、大体の予想はついているけど。自分のために大怪我をした黒神のお見舞いといったところだろう。

 律儀なのはいいけど、気がないなら放っておいた方がいいぞ〜、と、それは言わないけれど。


 ◆◆◆


 時は過ぎ、夏も終わり、短い秋が存在感皆無で過ぎ去り、冬、十二月に突入する。

 僕が同じ学校に居てやれるのもあと僅か。夏を逃した今、残された道は冬の大イベント、クリスマスのみとなった。


「兄ィ、今年のクリスマスも楽しみだね〜」

「今年はクリスマス、やらねーよ?」

「……? え!? えぇぇーーーー!?」


 毎回のことながら、いいリアクションだな。と、リアクション芸は横に置いて、今年のクリスマスは紗凪と意中の人をくっつける作戦を決行するわけだ。

 あの後も何度か集まり遊んだけれど、結局あかりちゃんが金池にゾッコンということしか判明していないわけで。


「紗凪、もう一度だけ聞く。入学式の日、お前は誰に告白したんだ?」

「はわっ、も、もういいよぉ、そんな大昔のこと……」

「大昔も小昔もない。その気持ちを、そのままなかったことにするわけにはいかないはずだろ?」


 いいから言ってみろと、僕はなるべく角のない口調で紗凪を諭した。紗凪は答える。


「……たっくん、だよ」


 やはり、そうだよな。なら、その告白劇の裏側を聞き出す必要がある。金池が嘘をついているかどうかを見極める必要がある。

 すまん、金池。疑うわけではないけれど、僕の一番は紗凪なんだ。悪く思うなよ。


「本当に金池なんだな? 紗凪、どうやってフラれたか憶えているか?」

「うっ、えっと、そう、け、結婚を前提にって、言ったらね、ごめん、部活あるから! って、逃げられちゃったんだ」


 ん? まさか。


「なぁ紗凪。お前の前に誰か挟まってなかったか?」

「挟まっ……はっ! なんか大きめの女子がいたよ? 凄く大きな声で何か言ってたような」


 馬場谷園烈子じゃねーか!!!!

 馬場谷園、烈子じゃ、ねーーかーーーー!!


 僕は心の中で叫び、同時にガッツポーズを取る。

 つまり二人は元々両想いだったわけだ。金池なら僕も安心して紗凪を任せられる。

 決まりだ。クリスマス、紗凪と金池、二人きりのデート計画始動だ。


 要約すると、紗凪の告白はノーカン。馬場谷園烈子の爆音告白により揉み消されていたわけだ。当然、断りの言葉も馬場谷園烈子に向けられたものだ。


 その時、僕のスマホが鳴った。メッセージだ。


 ——金池先輩とのクリスマスデートの件ですが、


 上野あかりちゃんからだった。

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