57(紗凪視点)
絶体絶命のピンチになっちゃった私とあかりちゃん、あとついでに黒神君。けれども、まだ私たちに希望はあったみたいです!
何を隠そう、会長だよ!
会長が助けに来てくれた!
小さくて可愛いなぁ。あ、そうじゃなくて、私も泣いてる場合じゃないよ。そう思って、あかりちゃんに群がる男子に噛みついてみた。
思いのほか効いたみたいで、手を放してくれたから、ここぞとばかりに渾身の蹴りを入れたんだけれど、これもまたクリティカルだったみたい。
と、とにかくあかりちゃんを後ろに下がらせて、はだけた制服を元に戻した私は、烏丸愛を指差して言ったの。
「わ、わ、わわ私がっ、きき、気にならないなら、せ、正々堂々と、いいい〜っ、たいいちで、しょしょしょ、勝負しなよ! よ、弱虫!」
言っちゃった!? はわわわ、どうしよ?
「はぁ? 馬鹿かよ、生徒会長までおでましなんだ。無駄な時間取れるかってんだよ。ち、テメーら帰るぞ?」
およよ? 帰っちゃうの?
良かったぁ。
「のじゃらっしゅぁぁーーーーい! お主、もしやこのまま何事もないまま逃げ果せることが、可能と思っているのか? 良かろう、そのタイマン勝負、我が見届けてやろうではないか! のぉ、お主、まさか、逃げるなんてことはないじゃろ?」
「なっ、何言っ……そ、そんなこと、アタシのママが許すわけっ……」
「お主のママが許すとか許さんとか知るかボケちん一年坊主めが。我の母はPTA会長なのじゃ。そんな小物、一声で排除出来るのじゃ」
「そ、そんなっ……で、でも! が、学校側が、ほら、お金とか色々」
「のじゃーーーー!!」
「ひっ!?」
「たわけ! このたわしが!」
会長……今の何?
「たわけが。烏丸家が抜けた分はうちで工面出来るから問題ないのじゃ。ほれ、文句があるなら受けて立たんか」
「くっ……そが……」
あれ? 結局、勝負するの!?
どどどどどど、どーしよう? 調子に乗って言っちゃったけど、ぜぜぜ、絶対勝てないよ!?
結果。
ボコボコにしちゃいましたぁ〜!
思ったより全然弱かったな、烏丸さん。でも、会長の力を持ってしても、一週間の停学処分に。
それで済んだだけマシだったのかな。烏丸さんの処分も、会長の一存で今回限りの停学に留めてくれたみたい。やっぱり優しいな、会長。
烏丸さんは号泣しながら謝ってた。それが本音かどうかなんて、私は気にしないけれど、でも、やっぱり喧嘩は後味悪いな。いつか烏丸さんとも、ちゃんと仲直り出来ればいいな。
そんなこと考えるのって、おかしいのかな。
だって烏丸さん、黒神君のことが好きだったみたいだし、お祭りの日、私と黒神君が二人でいたことに嫉妬しちゃったとも言ってたし。
「それでも、あの人のしたことは許されることじゃない……」
あかりちゃん……
「そう、だね……」
決戦の日、家に帰ると兄ィが待ってた。
玄関先で。
「ありがと、兄ィ」
「なんのことだ? ほら、飯は出来てるから、手ぇ洗ってこいよ?」
「うん!」
会長に連絡してくれて、ありがと。
あと、我慢してくれて、ありがと。私は兄ィに幸せになってほしいから、嬉しかったよ。
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