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両の頬を掴み、捕獲された宇宙人と化した少女Sをじっと見る。鳴らない口笛を吹く宇宙人とは、何を隠そう、僕の妹である。
「紗凪、ちゃんとこっちを見て話を聞くんだ」
「ワレワレハ、ウチュージンダ」
「紗凪! 僕は色々調べて知っている。お前は烏丸愛にイジメられているんじゃないのか?」
「……ナ、ナニヲ、イッテ、」
「誤魔化さなくていい。今、この場で誤魔化さなくてもいいだろ? 紗凪のことだ。あかりちゃんや、その、庇ってくれる男子とかに気を遣って、平気な顔をしているんだろ」
「……べ、べべべゔぇ別に、しし、心配、ななないよ!?」
宇宙人か。
「いいから頼れ。僕が直接言ってやってもいいんだぞ?」
「だだ、駄目だよ! か、烏丸さんのお母さん、偉い人だし」
「子供の教育もろくに出来ない親の何が偉い親だ! 止めるなよ。僕は明日、カラスをぶん殴るからな」
「そ、そんなことしたら兄ィが退学になっちゃう!」
「退学でもタイガーでも何でもいい! 紗凪を泣かせる奴はこの兄ィが許さないっ。紗凪は僕が守らなければいけないんだ!」
しかし、紗凪は首を横に振る。
「兄ィの力は借りないよ。自分の力で、乗り越えてみせる……わた、し、強くなるんだ。だから、一人でたたかう!」
何も言えなかった。紗凪はいつの間にか、僕の想像すら出来ないほどに成長していたのだ。
「万が一のことがあれば、僕が出張る。約束しろ、相手を殴らない、なるべく仲間を頼ること」
「わかった。言い負かせてくる!」
これで良かったのだろうか。だが、この意思を僕が曲げるわけにはいかない。何より、こんなくだらないことで、妹改造計画を邪魔されてたまるか。
計画の支障になるものは越えていけばいい。
しかし、やはり心配だ。
僕は僕で、やれることをしておくとしよう。陰ながら応援するくらいならいいだろう。
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