50(あかり視点)
ん〜、居なくなっちゃった。誰がって?
何を隠そう、紗凪ちゃんだよ!
「先輩、やっぱり何処にもいませんよ?」
「まいったなぁ。さ、紗凪ちゃんの提案で木下と田間を二人にしたまでは良かったのだが」
紗凪ちゃん、心細くなってるに違いないよ。どうしよ、先輩と二人なのは嬉しいけれど、それどころじゃないよ。わたしの紗凪ちゃん、何処にいるの?
「先輩、と、とにかく捜しましょう!」
「そうだね。というか、連絡してみたらどうかな?」
「それが連絡は入れてるんですけど、既読もつかないし電話にも出ないんです」
「あー、紗凪ちゃんスマホ殆ど見ないらしいからね。どうしたものか」
「どうしましょう」
このままじゃ紗凪ちゃんがナンパされて悪い大人に連れ去られちゃう。何とかしないと!
「あかりちゃん、手分けして捜そう。俺の連絡先を教えるから、スマホ出して!」
「へ!? あ、はいっ!」
え!? やった! 先輩のIDゲット!
って、喜んでる場合じゃないよ。
「それじゃあわたしはお手洗いの方を!」
「俺は入口から見て回る。そうだな、ひとまず三十分捜して見つからなかったら、ここで落ち合うってことで。何かあったら連絡を」
はい! と、わたしは先輩に背を向け捜索を開始する。先輩、あんなに必死になって、やっぱり優しい人なんだ。いいなぁ紗凪ちゃん。わたしもあんな風に心配してもらいたいな。
……あ。わたしのばか。
わたし、ちょっと嫌な子だ。
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