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まさか女子と二人で祭を見て回るなんて、思ってもいなかった。いつもの彼女なら、横を向いても視認出来ないけれど、今日の彼女は長い髪を盛りに盛っていて、その分高くなった部分だけは視認出来る。何を隠そう、生徒会長様だ。
紗凪もそうだけれど鸞子の手は更に小さくて、少し扱いに困る。あまり強く握ると潰れそう。
「のじゃのじゃらんらん、のじゃらんらん」
なんかめちゃくちゃご機嫌だな。
「なぁ鸞子。せっかくだからくじ引きとか色々回ろうか」
「おうなのじゃ! お主の行きたいところで構わんのじゃ」
紗凪たちは見当たらない。けれど金池がいるし安心か。僕も少し楽しむことにしよう。
側から見れば妹連れの兄にしか見えないであろう僕は、妹、もとい、会長殿を連れて金魚掬いに射的、更にはくじ引きとまわり、屋台でたこ焼きを買いベンチに腰掛けた。
「熱っちゃのじゃらば!」
え?
「馬鹿だな鸞子、一口で食べようとするからだぞ? お前、口もちっこいんだから、こうして二つに割ってだな」
熱々のたこ焼きを切り分ける。
ふと視線を感じて、鸞子と目が合った。
「あ、あ〜ん」
「いや待て、おま、それくらい自分で……」
「あー……」
頬を赤らめたこ焼きを待つ鸞子。
僕は無意識のうちにたこ焼きを取り、その小さいお口に、そっとお届けする。
「はむ、ふむふむ……お、美味しい、のじゃぁ」
あれ? なんか可愛いんだけれど、き、気のせいだよね? と、僕が思考停止状態に陥っていると、今度は鸞子が僕の口にたこ焼きを運んで来た。
「あ〜ん、なのじゃ」
「え、いや、えと、あ、あ〜」
「のじゃら!」
「ぶあっちゃぁーーーっ!!!!」
殺す気か!!!!
けれど、今日の鸞子は本当に彼女みたいだ。鸞子となら、楽しい日々を送れそうな気がした瞬間だった。
「お、暗くなってきたな」
「そろそろ、時間なのじゃ」
「だな。皆んなともそこで合流出来るかも知れないし、僕たちはもう少し歩いて向かうか」
「お、おうなのじゃ!」
僕がこんな気持ちになっていいのだろうか。
けれども、今だけ、今日くらいは、
「お主は、……木下はもっと、自分のことを考えても良いと思う、のじゃ」
田間鸞子。何でも見透かしてくる。
堪らん子だよ、ほんと。
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