51(紗凪視点)


 と、突然のことで、ちょっと混乱してます。

 何を隠そう、私です!


 どうしよう。勢いに負けちゃって二人で歩いてるんだけれど。たっくんとあかりちゃんは何処なんだろ。


「木下、浴衣似合っているな! 髪も切って見違えた、ええーい、回りくどいぞオレ!」

「へ?」

「木下、可愛いぞ!」


 な、なな、なな何なのこの人!?

 圧が……凄い圧が。か、可愛いだなんて、きっと黒神君……あ、トリプルK君、あ、それじゃぁトリプルじゃなくなっちゃうよって、そ、そんなことはどうていいんだよ!

 黒神君、私なんかを可愛いだなんて、間違いなく視力悪いよ。


「め、眼鏡、かけた方がいいよ?」

「オレの視力は両目とも2.0だ! つまり、木下! お前は可愛い!」


 あーっ、また言ったぁ! ふぬぬぬぬ。今日いきなり話しかけてきて、いきなり可愛いだなんて、やっぱりそうだ。外の世界には危ない男の子がいっぱいいるんだよ。あかりちゃんが言ってたもん!

 男の子の目線には気をつけろって。


「じぃー」

「木下、そんなに見つめるなよ? か、勘違いしちまうだろ?」


 勘違い? よくわからないなぁ。

 黒神君、多分悪い人じゃないんだろうけれど、ちょっと苦手かもだなぁ。ガツガツしてるというか、ちょっと強引というか。

 私、もっと優しい人がいい。


「なぁ木下、メアド、交換しないか?」

「え、あ、その、えと、あう」

「はい、これ、オレのQRコード」

「う、うん……」


 ぴろーん。


「ありがとな。おっと、どうやらお迎えが来たみたいだな。また連絡するよ。じゃあな! とうっ!」


 とうっ、て。嵐のような人だったな。

 ちょっと憂鬱だ。男の子はやっぱりこわいな。


「紗凪ちゃーん! 先輩、紗凪ちゃんがいましたー! 今、確保します!」

「はわわ!? あ、あかりちゃぁぁん……」

「おー、よしよし。こわかったんだねぇ、もう大丈夫だからね〜。わたしの胸で泣きたまえ、えい!」

「ぶふっ」


 苦しいよぉ……でも、安心する。

 あかりちゃん大好き〜!

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