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 体育祭も折り返し(昼食は叔母さんが用意してくれていた)、次第に盛り上がりも増してきた頃、僕たち三年生の借り物競走が行われているのだけれど、その借り物競走で借りられちゃった一年生がいた。


 何を隠そう、僕の妹だ。


 借りたのは学園一と言っても過言ではないイケメン金池なのだけれど、どうやらメモに『妹属性』と記されていたようだ。それで僕の妹、紗凪を咄嗟にチョイスしてグラウンドを仲良く走っているわけで。

 しかし紗凪、なんだか顔が赤い。ちゃんと前見て走らないと、また転ぶぞ? 今回は金池がいるから大丈夫だろうけれど。


 うーむ。しかし何だ。あの二人、匂うな。


「あ、あのっ、お兄さん? 走らないんですか?」


 皆んな行っちゃいましたよ? と、愛くるしく首を傾げるのは僕が借りた『一年生女子』のあかりちゃんだ。僕が悪意満ち溢れた借り物に戸惑っていると、あかりちゃんの方から「お兄さんっ」と出て来てくれたのだ。なんていい子なんだ。

 小さいし、可愛いし、果実感マックスだし、あぁ、今こそが、この瞬間こそが高校生活で一番幸せな時かも知れない。手を繋いで走ることで伝わる感触、小動物のような瞳で見上げては放つ笑顔、もしかして、——もしかしたら、あかりちゃんって。


 いや、ない。気のせいだ。あかりちゃんがいい子なだけだ。か、勘違いしないでよね!?


 さておき、紗凪の方は大変そうだ。

 何故なら、金池と手を繋ぎ走るという偉業を成してしまったわけで、つまりそれは全女子生徒の八割くらいのヘイトを一気に集めたことになるのだ。

 兄ィは少しばかり心配だぞ、今後が。


「おい、あの陰キャっぽい奴、上野あかりと仲良さそうに走りやがって」

「誰だよアイツ。見ない顔だな、一年生か?」


 三年生だよ、悪かったな目立たなくて。せいぜいぼやくがいいさ、何せあかりちゃんと僕の仲は、家にも遊びに来るくらいの仲なのだから!

 ふっ……こんなに心地よいヘイトを僕は未だかつて味わったことがない。そうか、これが勝ち組というやつか! ありがとう、あかりちゃん!


「あの、お兄さん? もうゴールしましたよ?」

「ありがとう。ありがとう」

「あ、はぁ……ど、どうもです〜」


 そして、体育祭は佳境を迎える。

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