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体育祭がやってきた。もはや僕たちに逃げ場はない。この面倒極まりない祭典を乗り越えなければ明日はないのである……
毎年この時期になるとテンションが下がる、——例えるなら遊園地のアレのように急降下する兄妹がいる。何を隠そう、僕と僕の妹だ。
体育祭はファンファーレ、その後入場からの校長ロングスピーチと続くお決まりの展開で始まった。
うちの学校の体操着は、当然だけれど普通のハーフパンツに白いシャツである。間違ってもブルマなんてものは履いていない。それを毎年僕に抗議するイケメンは放置しながら一年生の百メートル走を見る。紗凪は背も低い方だし、出番は早いと思うのだけど。というか、僕のシスコンも大概だな。
「あ……」
「ん、どした? 金池? 口、開いてるぞ?」
「い、いや何でもないでおじゃる」
口調! 口調が素になっとるでおじゃるよ!?
と、その時だった。パァン! とスタートの合図がこだました。それと同時に男共の「おお!」ボイスもグラウンドに響き渡った。
第一走者。男共の視線を釘付けしした一年生女子の正体とは。何を隠そう、あかりちゃんだよ!
視線が、——視線が自然に上下する。周りの女子からは「男子サイテー」などの軽蔑の声も上がり始める。男子である以上、あれに惹かれるなと言う方が酷である。さておき、次の走者は紗凪か。
恐らく緊張のあまり足が震えているであろう紗凪(産まれたての小鹿の半分くらいはプルプルしていそう)の心とは裏腹に、残酷にも、パァン、と、スタートの合図が鳴る。
と、同時にグラウンドに「あぁ!」と声が上がった。
木下紗凪、高校一年目の体育祭は、盛大な転倒から始まった。
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