13


「お兄ちゃんっ!」


 おでこ丸出しの女子高生が連呼する。


「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんっ! よし、今日から兄ィはお兄ちゃんなんだから! か、覚悟してよね!」


 何故かツンデレ風味なトーンで、腰に手を当てカピバラパジャマ姿でドヤ顔を炸裂させる女子高生とは。何を隠そう、僕の妹だ。


「何だ紗凪? この前あかりちゃんに言われたこと、まだ気にしているのか?」

「何のことかな、お兄ちゃん?」


 うーむ、やりづらいなぁ。


「お兄ちゃん、冷蔵庫の中のプリン取って来て!」

「何故僕が取らなきゃならん。紗凪は立っているのだから、その足で取りにいけばいいだろ?」

「だ、駄目だよ兄ィ、あ、お兄ちゃん! い、いいか、わ、わかったら早く取って来てよね? ふん」


 何もわからんわ。

 紗凪がツンデレに進化した。


 あれか。最近見始めたアニメのヒロインを意識しているのか。ツンデレ妹キャラ設定なのだな。仕方ない、少し付き合ってやろうか。


「ちゃ、ちゃんとスプーンも持って来なさいよね? わ、わかってるでしょうね?」

「そんなに一つのプリンを仲良く食べたいのか? やれやれ、甘えん坊もいいところだ」

「べ、べべべべ、別に……お、おにおに、おに、お兄ちゃんは蓋についた汁だけで十分なんだから! というかお兄ちゃんが汁なんだから! か、か、かか、か、勘違いしないでよね?」


 汁!


 ……気を取り直し、僕は冷蔵庫からプリンを一つ取り出しスプーンも一つ手に取る。そのまま紗凪の隣に座りプリンの封を開ける。

 まるで紗凪の太もものようにプリプリでプルンプルンなプリンをスプーンで掬いあげ紗凪の口元へ持っていくと、紗凪が条件反射的に口を開く。


「あ〜……」ん、と、口を閉じた瞬間にスプーンを引いてやると、薄紅色の上唇と下唇が見事にくうを切った。途端に頬を赤らめる紗凪。

 差し出しては、引く。差し出しては、引く。更に差し出しては〜、引く。


「もぉ〜っ、兄ィの意地悪!」


 紗凪はノーマル紗凪に退化した。


 僕にツンデレようなんて、二、三年は早いぜ。しかし、前髪を上げたままでもちゃんと目を合わせられるようにはなったか。


「はむっ」


 何というか、僕もあかりちゃんのことは言えないか。紗凪が可愛くて仕方ないのかも知れない。

 僕は紗凪が、本当の意味で兄ィを卒業出来る日まで、兄ィでい続けよう。

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