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 僕の視界で繰り広げられる、尊さを絵に描いたような仲睦まじい女子二人のスイーツの分け合い。一方の頬についたクリームを指で掬って舐める爆乳天使と、その谷間へ沈みかけたサクランボを摘み取り口に含んでは頬を赤らめる女子の構図。


 な、な、何を隠そう。僕の妹とその親友だ!


 高一とは思えないくらいに成長したあかりちゃんが、——成長したのは胸だけだけれど、それはさておき、上野あかりちゃんが我が家に遊びに来ているわけです、はい。


「あかりちゃん、いつもありがとな。紗凪のやつ、外に出ないから」

「お兄さん、いえいえ、私も紗凪ちゃんといると興奮、あ、い、い、癒されるので! あ、勿論、お兄さんも!」


 僕を見て興奮されても困るよあかりちゃん。何故なら、興奮しているのは僕なのだから。


 ぶら下げた果実にそぐわぬ、あどけなさの残った童顔で満面の笑顔を炸裂させたあかりちゃんのふんわりショートヘアが心なしか跳ねる。

 僕が妹の親友に見惚れていると、それを感知したかのように紗凪は「兄ィ、エッチなこと考えてる!」などと言うものだから困る。

 図星を突かれると反論に戸惑ってしまう。僕だって健全な男子高校生なのだ。そんなピュアを絵に描いたような僕が、高校生としては規格外の爆乳(言うなればRPGの初期ダンジョンでラスボスに出くわしたくらいの規格外)を目の当たりにしたら、それは妄想も捗るわけだ。

 さて、どう言いわけをするかと、無い頭をフルに回転させていると、あかりちゃんが口を開いた。


「紗凪ちゃんって、まだお兄さんのこと、兄ィって呼んでるんだねー。はぁ〜、かわいい〜な〜、もう!」

「はわ、はわわわわ!? はわわわわわの、はわわわ!? ち、ちちち違うんだよあかりちゃん!? 今のはっ」


 はわわ長ぇ……


「いいじゃない〜いいじゃない〜、兄ィ、きゃーっ、紗凪ちゃん、最高だよーーっ! グッ! ジョブだよー!」


 あかりちゃんって相当に紗凪萌えなんだな。中学校の頃から大人しいイメージだけれど、紗凪といる時はテンションが上がる。普段学校では見られない一面を見られるのは、なんとなくお得感がある。


「お、おおおお、おにぃひゃん! はやくコーヒー淹れて来てっ!」

「いや紗凪コーヒー飲めないだろ」

「い、いいい、いーからっ!」

「へいへい、オレンジジュースな。大人なあかりちゃんはコーヒーでいいよな?」


 あかりちゃんが居ると紗凪の色んな表情が見れて面白いな。ま、表情なんて殆ど見えてないけれど。


 この分だと兄ィ卒業はまだ先の話だな。

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