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さて、入学式当日、真っ新な制服に袖を通した、クセのある長い髪の女の子。彼女は意気揚々と玄関へ向かい、見事に足を滑らせ尻餅をついた。
何を隠そう、僕の妹だ……
「いたた……」
「紗凪、大丈夫か?」
「兄ィ、だ、大丈夫だもん……わたし、今日から大人だから、こ、ここっ、こ、こ」
「鶏か?」
「もう! 兄ィ嫌い! 意地悪、い、言わないで。もう子供じゃないから、大丈夫だもん」
「ほぉ、おしり痛くないの?」
「……痛い。腫れてないかな、兄ィ?」
「どれ、ちょっと見せてみろ? おー、これはいかん。二つに割れているぞ……」
「そんなぁ〜っ」
最近、紗凪がよく口にしていた。
高校生になれば、もう大人だよね、と。
実際、中学生と高校生は違う。考え方も、身体つきも、——心身共に子供から大人へと変化していく。
それを踏まえれば、大人と言えなくもない。しかし中身が子供なのは変わりないのだけれど。
命に関わる大怪我をしたかのような大袈裟な表情で僕を見る紗凪は、大人とは程遠い存在であり。
結局、
僕たちはまだ、不十分な存在なのだろう。
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