Das Ende

戦友会の誘い

 あの日から数か月、十何年越しの願いが叶い親衛隊を離れたオーレンドルフの家に一通の手紙が届いていた。切手は貼られておらず、消印も押されていない。そんな封筒の裏面には『Willi Heroldヴィリー・ヘロルト』と書かれている。

「……ヘロルト大将からか」

 裏面を確認したオーレンドルフは小さく呟くと、レターナイフを使い封筒を開け、中に入った一枚の写真と便箋を取り出した。

「ヘロルト大将はどうしているんだろうな……」

 そう呟いて三つ折りにされた便箋を開き、中身を読んだ。



『オットー・オーレンドルフ殿

 拝啓

  依然として予断を許さない国際情勢の最中オーレンドルフ殿におかれましては、お健やかにお過ごしのことと存じます。

 現在、我がナチスドイツは過渡期を迎えており、大変革の真最中であります。ドイツ陸軍は報道でご存知かもしれませんがロッキー山脈を攻略中ですがゲリラ化した米軍を前に足踏みをしており、国内では様々な政治思想が入り乱れております。しかし、この流動性こそが国家の生き様であり、このドイツという国家がまた息を吹き返したように感じ、嬉しい限りです。我々は大罪を犯してしまいました。人類史に残る大罪を。今ドイツ国民はその罪と向き合おうとしています。たくさんの血がまた流れるでしょう。たくさんの悲しみが訪れるでしょう。しかし、それを超えた先に希望があるのです。新しいドイツがあるのです。

 それはさておき、オーレンドルフ殿の活躍は日頃からよく聞いております。植民地での功績を聞いて、戦友として鼻が高い限りです。そして、戦友会の開催の連絡も頂きました。来月のドイツ領スイスで開かれるこの会につきましてはぜひとも参加させていただきたく存じます。ハウサー将軍殿やマイヤー、ハイドリヒ総統も参加するとのことです。私としては、懐かしき戦友と会えることが楽しみでなりません。植民地での武勇伝をぜひともお聞かせ願いたいです。最近は非常に忙しく、またテロや暗殺の計画の噂も絶えません。ここ数か月間はずっと働き詰めだったため、来月の賑やかな会を楽しみにしております。以前にお約束した、ハイキングは如何ですか?それでは、来月にお目にかかれますことをお待ちしております。


敬具

 戦友、ヘロルトより』



「ふふっ、ハイドリヒ総統も参加なさるのか……楽しみだな……」

 オーレンドルフは立ち上がって自らの書斎にある予定表を取り出し、『戦友との再会』と書き込み、ぱたんとそれを閉じた。

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総統が死んだ日~Thousand Weeks Reich~ 犬飼 拓海 @Takumi22119

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