アプヴェーア
「ヴィリー・ヘロルト元国防陸軍伍長、そして親衛隊大将!」
「はい!」
まるで勲章授与式の時のように大きな声で名を呼ばれたヘロルトは咄嗟に返事を返す。そしてマンシュタインは
「貴君のこれまでの功績を賞して一級鉄十字章並びに他二点を授与する」
そう言って先ほどの勲章箱の蓋を開けてヘロルトに渡す。
「……生憎とレプリカではあるが君の国防軍時代の活躍を賞してこれを授ける」
「ありがとうございます……!」
勲章を受け取ったヘロルトは丁寧に蓋を閉じ、その場で大きく礼をする。
「次の二つは個人的なものだ。まずは親衛隊作戦本部長官就任の祝いだ。これを受け取ってくれ」
マンシュタインはそう言うと机の上に置かれていた正方形の箱を取り上げ、ヘロルトに渡す
「ありがとうございます」
「そしてもう一つ、これは形見として持っておいてくれ。
そう言って彼は将校服についたその勲章を取り始める。
「なっ……形見ってそういう……本当によろしいのですか?」
「ああ、別にいいのだ。その最高の栄誉を授けた人は今は敵。敵に与えられた名誉は時には大きな侮辱にもなるのだよ」
「なるほど……」
彼らしくない無理やりな理由に一瞬首を傾げたがそれほど余裕がないのだと勝手に自己解決させ、彼から
「……これで渡したいものはすべて渡し切ったわけだが、どうしようか」
「これで終わりなのですね……」
「ああ、これで終わりだ。でも、最後くらい我儘を聞いてもらおうかな」
「我儘……ですか? もちろんですとも!」
「君は将来の新しいドイツを担う一人の有望な人間だ。だからこそ君に言っておく」
「はい」
そして彼が放った言葉は容易に想像し難い言葉であった。
「先日
「労働者党や国防軍ではない……ということですね。ならば一般人か……でも一般人は総統官邸に入ることだって一苦労だ……ならまさか……そんな訳が無いですよね」
「残念だが、そのまさかなんだ」
「え……?」
「内戦が始まる前に就任直後の新総統、カール・デーニッツ元海軍元帥を爆殺したのは親衛隊保安部本部長官のハイドリヒ……ラインハルト・ハイドリヒだ!」
「……そんな、それは本当なのですか?」
「裏情報だから本当とは限らん。だが確率は非常に高い」
唐突に知らされた『真実』に愕然とした。真偽の程は定かでは無いが、彼のことだからやりかねなと、そう思ってしまう。
「それでは、これでおしまいだ。君のような部下が持ててよかったよ。私は一人でここを出て車列に向かうことにするよ」
マンシュタインはそう言いながらヘロルトの横を通り過ぎ、部屋のドアに向かう。
「待ってください……将軍。私からも一つ、最後にお願いがあります」
彼は部屋を出ようとするマンシュタインを呼び止めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます