Ⅰ-Ⅱ 戦後の諸国家
日の出る国
かつて、ロシアのさらに東の島々に、『大日本帝国』という頭脳明晰で勤勉な国民が住まう帝国が存在していた。
この国を統べるのは
彼らは対外との関係を断っていたが、アメリカが無理やり鎖国状態を終了させ、江戸時代が終焉を迎えたのと共に急速に近代化が進み、欧米から技術を大量に輸入し、気が付けば欧州に比肩する技術力を有していた。
1894年には日本と大清帝国による戦争で勝利をおさめ、その十年後に勃発した日露戦争においては提督・東郷平八郎率いる聯合艦隊が旅順港に停泊していたロシア海軍のバルチック艦隊をイギリスの支援の下撃滅。陸上では旅順の要塞を陥落させ、こちらでも戦勝を収めた。
1920年代後半にアメリカから発生した世界恐慌を皮切りに英仏などのブロック経済に押され、日本は中国大陸に活路を求めて進出を始めた。
1931年には関東軍が奉天軍閥の張作霖を爆殺し、これを中華民国のせいだと断定し満洲に大本営や陸軍大臣の制止を振り切り満洲領内に進攻し、満州事変を発生させた。そして中国大陸東北部の広大な荒野に大清帝国最後の皇帝である
さらに1933年には国際連盟から派遣されたリットン調査団による調査結果によって「日本による満洲の権益は認めるが、満洲領内の実効支配は容認できない」とし、日本軍の撤兵を求めた。しかしその決議に日本側は反発し、3月27日に国際連盟に脱退を通告し、同年ワシントン海軍軍縮条約から脱退した。
1936年2月26日に皇道派青年将校によるクーデター未遂事件である『二・二六事件』が発生し、犬養毅首相がその凶手にかかった。
結果軍部大臣現役武官制が復活し、軍人が政治に関与することが可能となってしまった日本政府はすでに形骸化してしまっていた。
実質的な軍事政権となった東洋の帝国は歯止めが効かなくなり、1937年の
開戦直後は技術力にものを言わせての快進撃によって優勢を保っていたものの、インフラの整っていない中国奥地へと範囲を広げていくにつれそのお粗末な兵站システムが顔を出し、補給が停滞し、戦線は膠着状態になった。元来中華民国との関係が良好であったドイツ第三帝国やイギリスが和平交渉の仲介を申し出たが、会議枚に交渉が決裂し、和平交渉が成功することはなかった。
そして1941年、アメリカが提示した日米交渉におけるハル国務長官による覚書、『ハル・ノート』により交渉は決裂、同年の12月8日にハワイのオアフ島にある真珠湾に航空攻勢を開始し、太平洋戦争が開戦した。
12月8日中にマレーシアにも同時に攻勢を開始し、数か月後には『東洋のジブラルタル』と評されるほどの戦略的重要拠点であった大要塞都市シンガポールを陥落させた。加えて同時に発生したマラヤ沖海戦では英国の戦艦『プリンス・オブ・ウェールズ』を含む多数の主力艦を撃沈、さらにはフィリピンの攻略にも成功し、連合国側の人間から見ても初戦は日本軍の圧勝であった。帝国陸海軍はその後も快進撃を続け、1942年中ごろには東南アジア大半の地域を占領していた。
しかし、その優勢もすぐに打ち砕かれることとなった。
1942年6月5日のミッドウェイ海戦において最強とうたわれていた大日本帝国海軍聯合艦隊が大敗を喫したのだ。これによって日本の戦力の大半が失われ一挙に弱体化。11月15日の第三次ソロモン沖海戦においても敗北し、加えガダルカナル島からの撤退など優劣が一挙に逆転した。
1943年4月にはブーゲンビル上空山本五十六長官の搭乗した飛行機が撃墜され、行方不明になり、懸命の捜査も虚しく、戦死が下された。
翌年にはインパール作戦が失敗し、トラック島の航空基地も壊滅的な被害を被り、台湾や沖縄に連合軍の上陸を許してしまった。
沖縄では島民をも巻き込んだ大激戦が繰り広げられることとなり、民間人を含めた十万以上の人間が死亡した。
1945年、広島と長崎に原子爆弾が投下されたのを皮切りに裕仁大元帥が降伏を申し出ようとしたとき、クーデターが発生した。
結果、長崎広島に加えて九十九里浜にも核爆弾が投下され、オリンピック作戦により大量の米軍が本州に侵攻を開始した。主に九州や関東で大規模で長期的な陸上戦が展開され、犠牲者は計測不可なほどであった。
1945年9月より始まった日本本土決戦においては日本本土の主要部が焦土化され、大本営は『国民突撃勤皇隊』を組織し、武器さえ持たない若い青年や女性が米軍に対し手榴弾や竹槍を持って突撃した。これらの突撃行為によって日本国内の国民は一億人から六千万人まで減少し、徹底抗戦も虚しく1947年4月1日、アメリカ含む連合国に対して無条件降伏を宣言した。
日本本土は終戦後に乗り込んできた連合国により分割統治が行われ、各占領区域で同化政策が取られた。
大日本帝国は、いや、日本人という民族は消滅した。
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