第397話 20章:私達をスキーに連れてって(8)
「ふう、これでよし」
魔力を止めると、結界はみるみる塞がっていく。
「ヨシかなあ?」
「そうは言っても心配はしてるだろうから、早く帰ってやろう」
オレは魔力で雪を操ると、二人を囲むようにかまくらとを作った。
ついでにイスも作り、システィーナに勧める。
ここが本物のゲレンデなのかはわからないが、あとでもとにもどせば問題ないだろう。
「んで、話って?」
システィーナは少し迷ったあと、まっすぐにオレを見た。
「夢をミるの」
「夢?」
「そう、化物と私が戦ってイル夢」
それって……バチカン最強戦士だった頃の?
「まるで私が私ではないみたいだっタ。でも、現実感がすごい夢で……大抵は起きると忘れてしまうのだけど、毎日メモをとっているうちに、少しずつ記憶に残っていっタの」
メモなんてとってたのか。
「私、とても人間とは思えない動きをしていたの。でもなぜか、あれは過去に実際にあったことなんだってわかルの……」
システィーナが悲しそうに目を伏せた。
「私が戦ったことで死んだ人もいた……。もしかして私、過去にひどいことをしてたの……?」
どう答えたものだろうか。
オレもシスティーナの過去を全て知っているわけではない。
だが彼女を傷つけることも、責めることもなしにしたい。
彼女はもう十分に苦しんだ。
それに……。
「そうだな……。オレもシスティーナの過去に詳しいわけじゃないけど、すごい力を振るっていてのは事実だ」
その力は、刃を交えたオレがよく知っている。
「そっか……たくさんの人を傷つけたんだよね、キット」
「それは違う」
「え?」
「たくさんの人を救ったんだよ」
「化物……ヴァリアントから?」
「そうだ。システィーナが戦うことで救われた命は多い」
「でも……あの夢は……」
「もしシスティーナのせいで人が死んだようにみえても、その人達は放っておいても生きちゃいなかったよ。ヴァリアントに喰われてな」
「そうナの?」
「そうさ。だからシスティーナは、人を傷つけたんじゃない。人を救ったし、救えなかった命があっただけだ」
「そう……カナ……」
「ああ。今こうしている間にも、世界中でたくさんの人がいろんな理由で理不尽に亡くなっている。その全てを救うことなんてできやしなし。でも、システィーナは一部とはいえ救ってきたんだ」
「そっか……ありがとね、カズ。聞いてもらえて楽になったヨ」
システィーナはほっと肩の力を抜いた。
たいしたことは言っていない。
だが、これだけのことがシスティーナにとっては大事なことだったんだろう。
それをわかってやれないとは、オレもまだまだだ。
「じゃあ私、もっと多くの人を救いタイ」
「それは……オレ達と一緒に戦いたいってことか?」
システィーナは真剣な顔で頷いた。
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