第396話 20章:私達をスキーに連れてって(7)
しばらくナイターを楽しむと、急に吹雪いてきた。
「うわぁ……全然前が見えないよ」
由依の言うとおり、視界は1メートルあるかどうかだ。
スピーカーから、ナイター中止の放送が流れている。
「気をつけて滑ろう」
まっすぐなコースだ。遭難なんてしないだろうが、他の客と衝突なんてことは十分ありえる。
由依が先頭、次にシスティーナ、最後にオレが続く。
オレは二人の気配を見失わないよう、注意して降りる。
気をつけていたはずなのだが……。
由依の気配が消えた?
それだけではない。
まだまばらに残っていた他の客の気配も消えている。
魔力を目に集中して10キロ四方を見渡してみる。
コース脇に生えていた木もなくなっているらしく、どの方向にも無限のゲレンデが広がっているようだ。
噂にあった神隠し的なやつか!?
「システィーナ!」
オレは少し前を滑るシスティーナに追いつくと、止まるように手で指示した。
「ど、どうしたノ?」
寒そうだな。
とりあえず雪と風を防ぐ結界を張るか。
軽く意識を集中すると、透明なドームに入ったように、オレ達の周りだけすっぽりと風と雪がやんだ。
「何者かの結界に閉じ込められたっぽい」
「ヴァリアント?」
「たぶんな」
システィーナは不安げに周囲を見回した。
「大丈夫、すぐ脱出できる」
見たところ、それなりに強力ではあるが神域絶界ほどてはない。
特殊な手順なしでも破れるだろう。
「待っテ」
オレが手に魔力をこめると、その手首をシスティーナが握ってきた。
「どうした?」
「少し、二人で遭難したイ」
えーと、何言ってんだ?
「間違えた。少し二人で話をしタイの」
「どういう間違え方だよ。話ならここから脱出した後でいいだろ」
「こんなときじゃないと二人きりにはなれないカラ」
ふんわりした雰囲気の中にも、どこか真剣味を帯びた視線がオレを刺す。
「わかったよ。少しでも危険を感じたら出るからな」
「うん!」
「それと……」
オレは手のひらを空に向け、魔力を撃ち出した。
白い光の線が吹雪を貫き、不可視の結界に穴を開ける。
「由依、聞こえるか?」
魔力を飛ばして、由依に語りかける。
『カズ!? 急に消えてどうしたの!?』
「ちょっとシスティーナと遭難してから帰る。心配せずに温泉にでも入っててくれ」
『どういうこと!?』
「風邪ひかれても困るから、ちゃんとホテルに帰るんだぞ」
『説明! 説明を求めるわ!』
「こっちは安全だから心配するな。すぐ戻る」
『どんな遭難よそれ! ちょっとー!?』
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