第394話 20章:私達をスキーに連れてって(5)
「カズ、次は私と……」
ちょっと寂しそうにソリを引っ張るシスティーナが、オレの隣に寄ってきた。
たしかにいい大人が、1人でそり遊びはなかなかだよな……。
このそりスペース、本格的なこともあって大人もいるのだが、やはりメインは子供と親子連れである。
たまにキャッキャウフフするバカップルもいたりするが……あれ? オレってもしかしてあいつらと同じだと思われてる?
というか、むしろハーレム野郎だと思われ……いや、考えるのはよそう。
オレはシスティーナ達のためにつきそっているのだ。
他人にどう思われようと気にしないのである。
しないったらしないのである。
長いコースだけあって、そりはロープリフトがひっぱってくれる。
もちろん、持ち主は乗ったままだ。
オレは後ろからシスティーナを抱きかかえる形でそりに乗る。
さっきは義妹の双葉だったからよかったが、女子と二人でやるもんじゃないな。
恥ずかしすぎる。
「イイところね」
そりからゲレンデを眺めるシスティーナの銀髪が風になびく。
その顔は、楽しげでありながら、どこか寂しげでもあった。
「晴れてよかったな」
「ええ、冷たいけれど、気持ちイイ風……」
「雪焼けしちゃいそうだな」
「由依に日焼け止めをたっぷり塗ってもらったからヘイキ」
「体、つらくなったら言えよ」
「大丈夫。カズのおかげダネ」
システィーナはオレの胸にコトンと頭を預けた。
「こらー! お兄ちゃんとイチャつくなー!」
少し前を行く双葉が、こちらを振り返って叫ぶ。
恥ずかしいからやめて!?
◇ ◆ ◇
「ナイターはどうする?」
そう言ったのは由依だ。
「私はパスで……。もうへろへろ……」
最初にギブアップの声を上げたのは美海だ。
彼女の場合、能力を上手く使う訓練に集中していたのも原因だろう。
そろそろフィジカルにも手を入れていかないと、ヴァリアントとの戦いで足元をすくわれかねないな。
「あたしも。お腹いっぱいで動けない」
続いたのは双葉だ。
「太るぞ」
「女子中学生は太らないの!」
どんな理屈だよ。
「じょ、女子高生もだよね?」
なぜそこで由依まで乗ってくるのか。
「若いうちは、食べた分以上に動けば大丈夫だろ」
「なんかちょっと言い方がおっさんくさいなあ」
ほっとけ。いっかいアラフォーを経験済みなんだよ。
歳をとると、ほんと痩せにくくなるからな。
高校生の体はスペシャルなんだよ。
「私は行きたいな」
遠慮がちにそう言ったのはシスティーナだ。
「じゃあ私も」
それに由依も続く。
以前会社でスキーに拉致られた時の夜は、強制飲み会だったので、ナイターは初めてだ。
由依達となら楽しめるに違いない。
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