第393話 20章:私達をスキーに連れてって(4)

 みんなの頑張りもあり、お昼には全員が足をそろえて滑れる程度には上達していた。

 さすが、普段からヴァリアントと戦うために訓練しているだけはある。

 ただし、美海を除いてだ。


 もともと運動な苦手な美海は、ごろんごろんとそれはもう派手にころびまくった。


「うぅ……体があちこち痛いよ……」


 スキー場のシンプルなラーメンをすすりながら、しょんぼり顔の美海である。


「午後は休憩にするか?」


 レジャーなんだし、嫌々やるものじゃない。


「でもせっかく来たのに……」


 皆に遠慮しての発言だろう。


「あたし、ちょっと疲れちゃったから午後はそり遊びでもしようかな」


 そう言ったのは双葉だ。

 ゲレンデの隅に、本格的なそりコースがあったな。


「双葉ちゃん……」


 美海は自分を気遣ってくれたと気付いたのだろう。

 すまなそうな顔をしている。


 全員で残ってもいいが、システィーナはちらちらと窓から見える山頂に目をやっている。

 滑りたいんだろうなあ。

 今日ここに来たのはシスティーナのためでもあるし、どうするかな……。


「じゃあ午後は、みんなでそり遊びをしまショ」


 そう提案したのはシスティーナだ。


「いいのか?」

「みんなと遊んだ方が楽しいカラ」

「わかった。じゃあそうしよう。由依もいいか?」

「もちろん」


 いい仲間だよなホント。

 異世界で組んでいたパーティを思い出す。

 彼らとも、もう少し平和な世界で出会えていたら、こうして一緒に遊ぶことがあっただろうか……。




 そり用のコースは500メートルを超えるえらく立派なものだった。


「キャー!!」


 ふたり一組で乗ったソリは、ものすごいスピードで斜面を滑り降りていく。

 ハンドルやブレーキもついた、普通よりは少しだけお高そうなそりなのだが、しょせんはプラスチックの板にちょっと手を加えただけのもの。

 まともに制御などできはしない。

 ほぼ真っ直ぐ下るのみだ。


 オレの脚の間に入った双葉は、楽しそうに悲鳴を上げている。

 顔が地面に近いせいで、かなりのスピード感だ。

 普通なら恐怖で顔がひきつってもおかしくないほどである。

 ヴァリアントとの戦闘をこなしている彼女達にとって、これくらいは楽しい遊びだろう。


「ふー、楽しかった!」


 立ち上がったオレ達に、由依&美海ペア、そしてシスティーナのソリが続く。


「おいおい、結局そり遊びかよ?」「オレ達が教えてやろーか?」


 そうヤジを飛ばしてきたのは、先程のナンパ男子達だ。

 なんなの? 監視でもしてんの?


「おかまいなく。楽しく遊んでいますので」

「ちっ……」


 由依のひと睨みであっさり退散するくらいなら、最初から声なんてかけなきゃいいのに。

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