第388話 19章:かみまい!(11)

「この程度でよければ、オレだってできるぞ」


 オレはつま先で地面をトンと叩いた。

 すると、オレを中心に半径10メートルほどの地面が粒子となった。

 足元が砂浜のような感触に変わる。


「ば、ばかな!」


 驚くウカがオレを睨みつける。


「お兄ちゃん、あたしにやらせて」


 かばっていたはずの双葉がオレの前にでてきた。


「強いぞ」

「わかってる。でも、あたしが相手をしてあげなきゃいけない気がするの」

「わかった。気をつけろ」


 オレはいつでも助けに入れるよう警戒しつつ、大きく下がった。


「なんのつもりだ」

「あたしを殺したいんでしょう?」

「ターゲットはナンバカズだ」

「うそ。あなたの目はちらちらあたしを見ていたもの」

「そんなことはない」


 意識して出された平坦な声は、かすかに震えが混ざっている。


「あたしもあなたのこと、気になるから」

「なんだと?」

「あなたもそうなんでしょう?」

「何を言っているかわからないな……」

「ヴァリアントだとかそういうのじゃなく、嫌でもわかってしまう。あなたがいるって。だってあたしがそう感じるんだもの。人間どうしの親子でも、こんな感覚きっとない。だから、嫌でも意識してしまう」

「…………」


 ウカの沈黙は肯定だ。


「私が人間と繋がりを感じるなど、あるはずがない! お前など関係ない!」

「あたしを人間だと言ってくれるのね」

「自分が神かヴァリアントとでも思ったか? お前の体は弱くて脆い人間だ」

「そうね……あたしは人間。お兄ちゃんの妹。それで十分」

「そうだ! お前はただの食料にすぎない!」


 砂となった地面を蹴って、ウカが双葉に迫る。

 しかし、ウカの振り上げた拳は双葉に届くことはなく、直前の空間に防がれた。


「これは神域絶界の感触!? バカな! 一人が二重で絶界を展開することなんてできるはずが!」


 ウカは見えない壁を何度も叩くが、全く砕ける気配はない。

 瞬時に双葉の横に回り込むも結果は同じ。


 一度大きく下がったウカは、何かに足を取られ、尻餅をついた。

 足かせの形で空間に固定した神域絶界だ。


「なんなんだいったい!」


 声をあげるウカを、双葉は冷たい目で見下ろす。


「あなた、初詣の夜も人間を狩っていたんでしょ?」

「それがどうした? おまえたちも屋台とかいうので食事をしていただだろう!」

「クラスの子の記憶が少しずつ薄れていくのがわかるの。その子とはたいして仲がよかったわけじゃない。でもね……」


 ころんだまま後ずさろうとするウカだが、何かに足首を固定され動けない。

 拳を突き出すことで衝撃波を発生させるが、それも足下の砂を撒き散らすだけで、双葉には届かない。


「やっぱり許せないよ」


 双葉が呪符を横に振ると、呪符は瞬時に燃え散った。

 同時にウカの首がごとりと落ちる。


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