第384話 19章:かみまい!(7)

SIDE カズ



「昨日のアレはナニ?」


 豪華なおせち料理が並ぶ食卓で、そう疑問の声を上げたのはシスティーナだ。


「日本語上手くなったなあ」

「誤魔化さナイで。これまでもおかしいコトはあったけど、美海がバニーガールになっタリ、みんなの姿が消えタリするのは絶対ヘン!」


 かつてバチカン最強の戦士であったシスティーナには、過去の記憶がない。

 正確には、ヴァリアントに喰われたのと同様、記憶が改変されている。

 だが、オレ達と一緒に住んでいる以上、いつまでも隠し通せるものではないだろう。

 下手に詮索されると、彼女を危険に晒すだけだ。


 オレはシスティーナの辛い過去はぼかしたまま、ヴァリアントの存在と、オレ達がそれらと戦っていることだけを話した。




「信じられナイケド……ほんとのコトなの?」

「残念ながらな」

「じゃあ……私がここにいるのっテ、私の家族も……」


 そう考えるよなぁ。


「詳しいことはわからないがおそらく……」


 ウソではないギリギリの回答だ。


「そっかあ……。カズ達は私を助けてくれたんだね。アリガト」


 システィーナの微笑みは、どこかとても寂しそうだった。


「家族のこと、知りたいと思うか?」

「全く気にならないってコトはないんだケド、なぜかそれほど知りたいとは思わないの」


 システィーナの記憶は、ヴァリアントに喰われた時以上に失われている。

 もし記憶の消えるプロセスが異なっていて、微かに残った記憶が、彼女に思い出させるのを無意識に妨げているとしたら……。

 このままそっとしておくのが一番か……。

 こんな突飛な話をすぐに信じたのも、オレが彼女の心臓に定期的に魔力を注入するのを受け入れているのも、そのあたりが関係しているのかもな。

 彼女がシスティーナになる前の『セッテ』と記憶が混ざっているのも原因の一つだろうけど。


「ねえカズ、私も戦いたい」


 何を言い出すんだ。


「いやいや、危ないから。やめとけ」


 せっかく戦いの日々を忘れられたんだ。

 わざわざ自分から首をつっこむことはない。


「でもその危ない戦いを、由依も双葉も美海もしているのデショウ?」


 日本に来てから一番強い意志を感じる言葉だ。


「だけど……」

「なにも足手まといになりたいと言っているワケじゃナイの。自分の身くらい守れるようになりタイ」

「中途ハンパな力は己の身を滅ぼすもんだ」

「カズ、私はシスティーナに訓練を受けさせてみてもいいと思う。もちろん、リハビリが終わってからだけど」


 そう言ったのは由依だ。

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