第383話 19章:かみまい!(6) SIDE ウカノミタマ

SIDE ウカノミタマ


「ナンバカズには手を出すなと言ってあったはずだな?」


 静かに響くヒミコ様の声に、私はただ頭を垂れるしかない。


「はい……」


 かすれた声を絞り出すので精一杯だ。


「妾はそなたの忠誠心を買っているのだ。多くのヴァリアントは、その強すぎる食欲が故に、恐怖と食事以外で組織を形成することが難しい。だがウカ、そなたは違う」

「はっ、ヒミコ様のためであれば、この身がどうなろうともかまいません」

「それこそ、妾がそなたをそばに置く理由だよ。ヴァリアントらしくないのは父親譲りかな?」

「私はスサノオ様を父だと思ったことは……」


 というより、実感がないと言う方が正しい。

 それが依代となった肉体に精神引っ張られているからなのか、この体で親子として接したことがないからなのか、理由はわからないが。


「ふふっ、そうであろうな」


 ヒミコ様の微笑みはいったいどういう意味なのか、私にはわからなかった。


「今回の件は許そう。だがあの男のことだ。次にお前を見つけたら容赦はしないだろう。その時は一人でケリをつけるのだ。手は貸さぬ。よいな」

「はっ……」


 ヒミコ様はそれほどまでにナンバカズを恐れているのか。

 いや、それだけではないかもしれない。

 もし私がナンバカズに倒されれば、それを何かの口実に使うのだろう。

 そうでなければ、失敗を許してくださるはずがない。


 つまり、ナンバカズを私が個人的に襲えということだろうか。


 準備はするが……勝てないだろう。

 それでもヒミコ様のためになるのなら私は……。



SIDE ヒミコ


 さて、ウカはどうするだろうか。


 大人しくしているならそれでよし。

 妾のためと深読みして、ナンバカズ達に挑むもよし。


 ウカなら動くであろうな。

 失うには惜しい手駒だが、そろそろ動き始める時だ。


 駒を取らせることで良くなる盤面もあろうというものだよ。



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