第379話 19章:かみまい!(2)

 お参りを終えたオレ達は、屋台の並ぶ参道を戻る。

 どこから沸いてくるのかというくらい、人々が参拝に向かっている。


「お兄ちゃん、何かいる」


 立ち止まった双葉が、立ち並ぶ屋台の裏側をじっと見つめている。

 たしかに人の気配はするが、それだけだ。

 屋台の裏に人がいるのは、何もここだけではない。


「何も感じないが」

「お兄ちゃんがそう言うなら……」


 口ではそう言いつつも、視線は屋台の裏に向けられたままだ。


「気になるなら行ってみるか」


 オレは屋台の隙間から裏にまわる。

 四人も後についてきた。


 ガスボンベをつなぎ直したり、食材をとりだしたりと、店員達が忙しそうにしている。

 木の影でカップルがいちゃついたりもしているけど。


 そんな中、見覚えのある顔を見つけた。


 13歳くらいで、切れ長のツリ目が特徴の、道着にハカマ姿なおかっぱ美少女だ。


「ナンバカズ!?」

「ウカか……?」


 互いに気付いたのは同時だった。

 直接見るまではヴァリアントだとわからなかった。


 彼女はウカノミタマ。

 ヒミコの部下で、長野で大きな戦いがあった際、ぬらりひょんにトドメをさしたのは記憶に新しい。

 神話上ではスサノオの娘である。


 そして双葉は、ヴァリアントとして顕現したスサノオの実の娘である。

 双葉自身は知らないはずだが。

 オレより先にウカの存在に気付いたのは、そのあたりもあるのだろうか?


「美海! システィーナを頼む!」


 その一言で全員が意図を察し、正確に動いた。

 由依は神器を発動、美海はシスティーナの手を取って下がり、双葉は下がった二人を入れないように神域絶界を展開する。


 静かになったこの空間にいるのは、オレ、由依、双葉、そしてウカだ。

 記憶を失ったままのシスティーナを戦いには巻き込めないし、念のため護衛が必要だ。

 分断すべきかは微妙なところだが、これがベストだとは思う。


 ウカは静かにこちらを見つめている。


「なにこのコ……強い……」


 着物の裾をあげて結び、黒タイツを太ももまで露わにした由依の頬を、一筋の汗が伝う。


 長野では傍にヒミコがいたせいで、その力の影に隠れていたが、単体でもかなり強いことはこうして対峙してみるとよくわかる。

 かつてオレの一撃を防いでみせたのはマグレではないようだ。


「ここで何をしている?」


 オレは黒刃の剣を出し、油断無く構える。


「応える必要はない」


 一方のウカは棒立ちだが、3人相手に全く隙を見せない。

 長野では近接戦闘特化という感じだったがはたして……。

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