第373話 18章:クリスマスの夜と言えば空を飛んでリングを取る(5)
なんだかんだで楽しかったパーティーもお開きとなった。
「みんな、今日はここに泊まるでしょ?」
オレと双葉はもともと同じ敷地にいるのだから、泊まるもなにもない。
「お泊まりセットなんて持ってきてないよ」
問題は美海である。
「大丈夫。ちゃんと用意してあるから」
「なんで!?」
そこはまあ、さすが由依ってことで。
余裕だと思っていたお泊まりだが、問題がひとつあった。
寝室が一つなのだ。
ちなみに、ベッドも天蓋付きの巨大なものがひとつである。
枕元に吊るされた靴下だけは、しっかり4足あった。
由依が用意した女子三人分のネグリジェは真っ白なシルク。
ミュージックビデオ用の映像かと見紛うほどの美しさだ。
ちなみにオレのパジャマも、白いシルクである。
落ち着かない!
「寝る順番はどうしよう?」
由依の一言で、女子三人の視線が交錯する。
「じゃあ、オレは別の部屋で……」
「だめよ、せっかくのクリスマスなんだから」
「そうそう、せっかくだから」
「せっかくだしね」
オレの遠慮は、あっさり却下されてしまった。
なにが『せっかく』なんだろう……?
「寝る場所は大富豪で決めましょう」
そう提案したのは由依だ。
「大貧民のこと?」
首をかしげたのは美海である。
「呼び名はいくつかあるらしいな」
メジャーなカードゲームだけに、呼び名のパターンや地方ルールがいくつもあるらしい。
「どうやって順位を決めるんです?」
双葉が言うように、1回で順位を決めるには向かないゲームではある。
「1位は4点、2位は3点みたいに点数制でどうかな? 10回終わった時点での合計点で競うの」
珍しく積極的な美海である。
大富豪好きなんかな。
「それでいいと思う。みんなは?」
見回す由依に、頷くオレと双葉。
「じゃあ――」
「じゃあルールを決めようか」
トランプを切り始めた由依を遮ったのは美海だ。
「ルール……?」
いま決めたよな?
「うん。まずヤギリはありでいいよね。連番革命はどうする? この人数なら、革命はジョーカーありでもいいかな。連番は3枚以上で、マーク縛りはめんどいよね。10捨てとイレブンバックはややこしいからなしで――」
が、ガチ勢だ……。
そうしてベッドに輪になり、始まった大富豪。
カードを出すたび、シルクのパジャマからチラチラ見える胸に理性を奪われつつも、ゲームは進んだ。
結果は意外なことに――
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