第371話 18章:クリスマスの夜と言えば空を飛んでリングを取る(3)

「ひゃあっ!」

「大丈夫?」


 尻もちをついた美海に手をかしたのは、ミニスカサンタコスに身をを包んだ由依だ。


「ふわあぁ……黒タイツ金髪巨乳美少女のミニスカサンタ……可愛すぎです……」


 由依の姿をなめまわすように見る美海の反応から、その魅力が伝わるだろう。

 正直、オレも目を奪われる。


「メリークリスマス!」


 ちょっと恥ずかしいのか、ほのかに頬を赤らめた由依が、白い袋から取り出したクラッカーを鳴らした。


 紙テープが高そうな絨毯にばらまかれる。


 え? クラッカーってこのタイミングだっけ?

 しかも、サンタ役が鳴らすのであってる?

 というか、少人数のホームパーティで、主催者自身がサンタ役で出てくるもんか?


 こういうパーティーに呼ばれたことがないからわからねえ!


 美海は……この娘もそういうのとは縁がなさそうだな。

 ぽかんとした顔で由依を見ている。


 こういう時に頼りになるのは双葉だ。

 学校でも上手くやってるみたいだからな。


 双葉はなぜか、菩薩のような顔で由依を眺めていた。

 どういう表情!?


「さあ、クリスマスプレゼントを配るわ!」


 そんな三人の様子が目に入らないのか、由依は白い袋の中をごそごそまさぐっている。


 すごい段取りセリフっぽい!

 さては、オレの想像よりだいぶ緊張してるなコイツ。


「いきなりプレゼント交換ですか……?」


 双葉が疑問の声を上げると、由依はキョトンとした顔をした。


「交換……? 今日の私はサンタだもの。交換じゃなくて、プレゼントですよ」

「あ、はい……」


 双葉は取り出した小さな紙袋を、そっと空いているイスの上に戻した。


 さすが双葉。

 クリスマスパーティーと聞いて、しっかりプレゼントを用意していたらしい。

 オレと美海はばっちり手ぶらである。

 いやほら……そんな発想はなかったっていうか……。


「最初のプレゼントは……じゃーん! これです!」


 あのー、由依さん。

 ドヤ顔で取り出してくれたところ悪いんだが、包装されててわからないんですが。


 それに気付いた由依は、包み紙を丁寧に破いた。


「ちゃっちゃらちゃっちゃちゃーちゃーちゃー! ツイスターゲーム~!」


 国民的猫型ロボットのモノマネをしながら取り出したのは、定番と言われつつも、実際にやったことのある人は多くないことで有名なゲームだった。

 ちなみに、取り出したときの効果音が、平成でおきたキャスト入れ替え前のものだったことにちょっと懐かしさを覚えるね。

 ちなみにオレはどちらのキャストさんも好きだ。


「せっかくだから、みんなが楽しめるものを用意してみたの。優勝者にはこのツイスターゲームをそのまま差し上げます!」


 い、いらねえ……。

 もらったところで、やる機会も相手もいないぞ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る