第350話 17章:美女とヴァリアント(2)
「え? え?」
女子アナが困惑する中、司会者はカメラに顔を向けた。
「さあ、どこまで覚えてくれるかな?」
おいまさか……。
司会者はがぶりと女子アナの首に噛み付いた。
吸血鬼が血を吸うといったかわいいものではない。
首の肉を半分ほど、食いちぎったのだ。
女子アナの首から吹き出した鮮血が、司会者と近くにいたアナウンサーを濡らす。
司会者が女子アナの服を引き裂き、露わになった乳房にかぶりついたところで、放送は途切れた。
「うそでしょ……」
つぶやいたのは由依だが、みな同じ気持ちだ。
オレが知る限り、始めてヴァリアントがメディアに出た。
たまたま朝のニュースで司会者がヴァリアントに覚醒した……わけがない。
明らかに何か狙いがあるそぶりだった。
単独犯か? それともヒミコ達が何かしかけてきたか? もしくは北欧か?
[なに……いまの……うぁ……頭が……いたい……]
苦しむシスティーナに睡眠誘導の魔法をかけ、ベッドに運んだ。
◇ ◆ ◇
朝の学校は、テレビの話題で持ち切りだった。
「今日のズームアップ見た?」「見た見た! あれ本物だよな?」「映画の宣伝とかじゃない?」「いやいや、ガチっぽかったぞ」「結局放送中止になって、ずっとボートの映像流れてたしね。宣伝であそこまでしないっしょ」「ナイスなボートだったな」
どこか他人事なのは、当然と言えば当然か。
彼らにとってはまだ、テレビでの出来事なのだ。
皆の記憶がどれくらい残っているかを確かめるためにも登校してみたのだが、まだ記憶の消去は始まっていないか。
これから時間が経てばどうなるのか……。
「カズ君、今朝のあれって……」
オレより先に登校していた美海が、駆け寄ってきた。
「ヴァリアントだな」
周囲に声が漏れないよう、由依と美海を含めてこっそり結界を張っておく。
よく観察されると、オレ達3人の声が周囲に聞こえないと気づかれる。
だが、結界にはこちらから意識を逸らす効果も付与しているので、魔力の弱い人間相手なら問題ない。
「やっぱり……」
美海は顔をしかめ、ため息をついた。
オレは由依と双葉に今朝そうしたように、美海にも記憶定着の魔法を強めにかけ直しておいた。
これだけ大規模だと、記憶の消去がどういった方法で行われるかわからないので、念の為だ。
「由依、現場の情報は入ったか?」
「まだ何も。かなり混乱してるみたいで、横槍を入れて情報を取るのはしばらく難しそう」
由依にあの後どうなったのか調べてもらっているのだが、白鳥家の力でも、それどころではないということか。
オレと由依は、自分達以外の様子がどうなっているかを確認するために登校した。
テレビ局に突撃する案もでたのだが、陽動の可能性も考え、まずは生活圏内の安全確認を優先したのだ。
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