第331話 16章:ヴァリアント・ザ・オリジネーション(15)
なぜカルロは他のメンバーをまいたのか。
普通に考えれば、ヴァリアントや組織関係の何かがあるのだろうが……。
5人になった時にたどりついたのは、システィーナと同じ名前を持つ礼拝堂だ。
そこで、彼女は熱心に祈りを捧げている。
一方、カルロに手招きされたオレは懺悔室に入っていた。
異世界を含め、これまでさんざん神や魔と戦ってきたオレが、今さら懺悔することなんてないんだが。
懺悔室は少し広い電話ボックスといった程度のサイズで、外からは見えないようになっている。
小さな隙間の空いた壁でしきられた向こう側には、人の気配がある。
内緒話をするには最適の場所とも言えるな。
「きみがナンバカズだね」
壁の向こうから、渋く優しい男の声がする。
流暢な英語だ。
しわがれぐあいからすると、初老といったところか。
「神様の使いのわりには礼儀がなってないんですね。こういう時は先に名乗るものだと思いますが」
「これは失礼した。だがあいにく名乗ることはできなくてね。キミにはこれで自己紹介の代わりになるかな?」
そう言った男の魔力が急激に膨れあがった。
ただ大きいだけではない。
なかなか練られたなめらかな魔力だ。
かなりの高水準と言っていい。
神器を発動していない人間の中では一番ではないだろうか。
もちろん、この世界での話だが。
戦闘タイプという感じでもない。
『組織』の中でも上層部にいる人間というところだろうか。
この魔力の質……コロッセオで見た老人に似ている。
本人かもな。
「それで、お偉いさんがオレに何のようです?」
「いやあ、噂どおりだね。ぜひうちに欲しいよ」
「そりゃどうも」
この賛辞は、魔力の質を見抜いたことに対してか。
それにしてもこの男、どうにもうさんくさい。
「システィーナをどう思ったね?」
「質問の意図がわかりませんが」
「率直な感想を訊いているのだよ」
「かわいいと思いますね」
「思ったより俗な回答だね」
欲しい回答ではなかったようだが、それで機嫌を悪くするような幼さは持ち合わせていない。
さすが、こういったところで上にいくだけはあるということか。
「出会って間もないですからね。あとは年の割にちょっと子供っぽいけど、とても良い娘だということくらいでしょうか」
「まるで年下の子供への評価だね」
「そうも見えるということですよ。本人に言ったら怒られそうですけどね」
20歳を越えていると言ってもあの見た目なら、もとアラフォーとしてはうっかり子供扱いしてしまう。
「ふむ……では『気付いている』と考えて話を進めるよ」
何を、とは問わない。
オレが気付いていることかもしれないし、そうでないなら向こうからボロを出してくれるかもしれないからだ。
「まさか結婚しろとか言うんじゃないでしょうね?」
「んん? はっはっは。そんな手もあったかもしれないね」
男は愉快そうに笑ったあと――
「キミにシスティーナを殺してほしい」
冷たい声でそう言った。
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